成長コラム One Point Column

Doing連載魅力経営のヒント
第7回 家庭と仕事を両立させるパートナーシップ (2010年2月号)
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■奥様からの質問「あなたは仕事と家庭、どっちが大事なの?」

「良い組織をつくりたい。良い仕事をしたい。良い人生にしたい」
経営者なら、だれしもがそう望んでいるのではないでしょうか?

しかし、一体どれくらいの経営者たちが、その望みを叶えているのでしょう?

今まで、多くの経営者の相談にのってきましたが、ほとんどの経営者は、理想と現実とのギャップに苦しんでいるのが現状です。しかし、ほんのわずかですが、良い組織をつくり、良い働き方をし、良い人生を歩んでいる経営者も確かにいらっしゃいました。

理想に向っている経営者は一体、何が違っているのでしょうか?
理想を生きている経営者は一体、何をしているのでしょうか?

いくつかの決定的な違いがありますが、そのひとつが「パートナーシップ(特に夫婦関係)」です。

ここで、一緒にイメージしてみませんか?

あなたは今日一日、精一杯に仕事をし、クタクタに疲れて家に帰ります。いつものように玄関の扉をあけて入ると、普段とは全く違った表情の奥様が立っています。そして奥様はあなたに「あなたは仕事と家庭、どっちが大事なの?聞かせてほしい」と迫ってきました。

さて、何と答えますか?どのような行動をとりますか?

これは非常に重要なヒントになると思いますので、ここで時間をとってゆっくりと、考えてみてほしいのです。あなたはどうしますか?何といいますか?何をしますか?具体的にイメージできたら、次のページへ進んでください。


■パートナーの心の奥の声に耳を傾けよう

さて、どんなイメージになりましたでしょうか?

少なくとも私が今まで相談にのってきた経営者に聞いてみると、そのほとんどが、これに似た質問をされた経験があり、地獄の扉が開き修羅場になったようです。
その例をあげると

「もちろん、家庭が大事だよ。だから、その家庭を支えるためには、こうして仕事を頑張っているんだよ。全ては君のため、家族のためなんだよ(めんどくさいなぁ。それぐらい分かるだろう)」

 「今だけだよ。分かってほしい。今は大変な時期なんだ。あともう少ししたらきっと落ち着くから(なんで分かってくれないんだ!こんなに頑張っているのに…、もう少し協力してくれてもいいんじゃないか?)」

 「家庭と仕事と両方だよ。こうして仕事を頑張れるのも君のおかげだし、家族のために頑張れるんだよ(両方に決まっているじゃないか。僕はこうして両方を大事にしているよ)」

この3つの例は、奥様との修羅場になった会話です。

分かりやすいように()の中がその経営者の心の声(本音)で、実はそれが奥様の地雷のスイッチとなったのでした。

奥様から「あなたは仕事と家庭、どっちが大事なの?聞かせてほしい」といわれたとき、ほとんどの経営者は、職業病が発病します。問題解決をしようとするのです。発生した問題を見てしまい、奥様の心の声が聞こえなくなりがちになります。

奥様が求めているのは、仕事か家庭かという「結論」や「解決策」ではなく、目に見えない「愛情のエネルギー」そのものです。だから、コトバ巧みに説得しようとしたり、うまく誘導や操作をしようとしたり、穏便に問題を解決しようとしても、ますます奥様の地雷のスイッチを踏み、さらに奥様のエネルギーを奪うだけでしょう。きっと奥様はもっと過激に愛情を欲した言動をするはずです。

奥様が「仕事と家庭、どっちが大事?」と聞く理由は、愛情のエネルギーが欲しいということ。愛情のエネルギー不足が原因からの言動なのです。だから、愛のある行動であればいいわけです。

無言で抱きしめるのもいいでしょう。
「さみしい思いをさせてごめんね」と素直に謝るのもいいでしょう。
いきなりビンタして「俺を信じろ」でもいいかもしれません(本当に、本当に、本当に愛からのビンタならの話ですが…)。

 奥様の全ての言動の目的は、愛情のエネルギー補給です。
エネルギーに満たされれば、自然と問題は解決し、逆に奥様のエネルギーが旦那さんへと流れ込んできます。こうして夫婦間でエネルギーの交換(交歓)が始まるのです。

 

■エネルギー不足になるのは、エネルギーを出し惜しんでいるから

 そもそも人は、エネルギー不足になると、何かしらからエネルギーを補給しようとします。今回は奥様の例でしたが、逆もまた真なりです。
夫婦間でエネルギー不足になると、経営者は仕事でエネルギーを補給しようとします。

内側の世界(自分、家庭、仲間)のエネルギーが切れると、外の世界(仕事、お客さん、モノ、お金)からエネルギーを奪おうとします。

 がむしゃらに働いて認めてもらおうとしてみたり(注目されるとエネルギーは集まる)、問題を起こして自分に注目を集めてみたり(怒られることでエネルギーを補給している)、趣味のモノを過剰に買ったり(高価なモノは、職人さんのエネルギーがあふれているものが多い)、偶然を装いモノを壊してみたり(たとえば皿を洗っていて、割ってしまうのは、皿からエネルギーを奪っている)、過剰にお金を稼いでみたり(お金を手にすることで得られる疑似的な自由を貪りたい)。

などのような行動をとって、触れる全ての人やモノからエネルギーを吸いつくすのです。まるでエネルギーのヴァンパイア(吸血鬼)のように。

 

■だから「組織崩壊」は「家庭崩壊」から始まる

 経営者の職業病のもうひとつに、「自己正当化や言い訳が得意になってしまう」というのがあります。エネルギー補給のヴァンパイア活動を、相手や周りに気づかれないようにキレイに偽装します。
ビジネスではよく「勝ち馬に乗れ!」と言われ、「今勝っている会社(人)、これから伸びそうな会社(人)と仕事をしなさい」というのが常識になっています。うまくいっている、伸びている会社(人)は、エネルギーに満ちています。

自分がエネルギー不足で、エネルギーのヴァンパイアになっていると、「あなたの仕事を応援しましょう」「よかったら、○○さんを紹介しましょう」「君はこうしたら、もっと良くなるよ」とか、あたかも相手のためになるようなことを言いながら、近寄っていくのです。もちろん、本人は無自覚なのですが、潜在意識は、誰がエネルギーがあるのか分かっています。

自分がエネルギー不足だと、自分がヴァンパイアになってしまっていることには気づきませんし、相手からエネルギーを奪っていることすらも自覚できないことがほとんどでしょう。

自分がエネルギーに溢れれば、自然と誰がエネルギーのヴァンパイアになっているのか、自分がエネルギーを奪ってしまっているのかが分かってきます(逆に、エネルギーを奪われてしまう瞬間も分かるようになります)。
だからこそ、パートナーシップを良い関係に改善して、お互いにエネルギーを充電することが重要なのです。

そうでないとエネルギー不足を、仕事を通じて補給しようとします。会社で補給するとは、そこの組織のメンバー、お客さんからエネルギーを奪うということです。ヴァンパイアは、まるで映画のように感染していきます。
ヴァンパイアにエネルギーを奪われた人たちはヴァンパイア化し、さらに周りの人たちのエネルギーを補給する言動をとるか、さらにエネルギーの補給場所を求めて旅立っていくのです。

「私が活躍できる職場は他にあるはず」という転職活動。「私にはやりたいことがあります」という独立などが、そうなのですが、それは幻想か逃避のどちらかがほとんど。ヴァンパイア化したエネルギーを奪う人のもとからは、どちらにせよ離れていくことには変わりありません。

もとをたどれば、エネルギーが家庭で補給できないことから始まったこと。すなわち、家庭崩壊から組織崩壊が起きていくのです。

 

■仕事の成功が、家庭の不幸になることもある。

先日、ある経営者Aさんの相談にのっていました。Aさんはある分野で成功され、Aさんのもとには事業の相談に訪れる方々が多数いらっしゃいます。

 Aさんとは、5年前くらいから親しくさせていただいていましたが、ここ最近は特に、エネルギー不足に陥っていると感じていました。まるでウルトラマンのカラータイマーが点滅し続けているように…。

 そんなAさんは、はじめは仕事の現状について話していましたが、今までのようなキレがなく、どこか息切れ感がありました。そして、話題はいつのまにか、奥様のBさんの話になっていったのです。

 BさんはAさんに「ほらこの先、景気もどうなるか分からないから不安なの。だからもし、あなたの事業が厳しくなっても大丈夫なように、私も頑張るわ。○○の資格をとって、会社を興そうと思うの。それは私の夢でもあったし、あなたと違った業種だから、もし何かがあっても大丈夫なようにね。だからまず△△会社で働いて実績をつくるわ。」と言って、働き始めたそうです。

 この話を聞いた時、妙な違和感がありました。奥様のBさんは、ヴァンパイア化しているように感じました。
そもそも、将来への不安とは、目の前の人への不安の現れです。つまり、奥様のBさんの「この先、不安なの」というのは「あなた(旦那さんのAさん)のことが信じられなくて、一緒にいるのが不安なの」と心が言っているようなものです。

さらにBさんの心を声に耳を傾けてみると「そもそも、あなたが私にエネルギーを全然くれないじゃない。だから、私はあなたとは違った世界で、あなた以外からエネルギーを補給していくわ。あなたは自分のことばかりで、(私が含まれていない)自分勝手な夢を追っているようだから、私は私の夢を追いかけるね。文句ないでしょ。お互い様だから」と、私には聞こえました。

 そこでAさんに、こんな話をしました。
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「奥様の独立に向けての動きは、旦那を支え、お互いに夢に向かって生きる妻の鏡のようにうつるかもしれません。
しかし、奥様の言う『この先の不安』とは、もしかすると、Aさんあなた自身への不安や不満の現れかもしれません。
本当は資格が欲しいのではなく、絶対的な安心と確固たる愛情が欲しいのではないでしょうか?資格があれば、不安定な心が少しは安定するかもしれない。自分も独立することで、周りから認められて賞賛のエネルギーがもらえるかもしれない。と望んでいるように私には聞こえました。

だからといって、単に奥様に優しくしましょうとか、甘やかしましょうとか言っているのではありません。奥様を御(ぎょ)する(リードする)ことが必要だと思います。御する(リードする)とは、何か?奥様と共に道を歩むということです。「御する」を英語でいうと「to drive」です。これは「乗りこなす」という単純な意味ではなく、共に同じ方向に進むということです。そのためには、進む方向を確認することが大事です。

なぜ、多くの経営者が「良い組織をつくりたい。良い仕事をしたい。良い人生にしたい」と望みながらも、実現することができないのか?それは進む方向が分からないからです。お互いに、にらみ合うのではなく、同じ方向を見ることです。だからまずは、自分自身がどこを見ているのかを自覚し、進むべき方向を見ること。それから、奥様がどこを見ているのかを知り、共に同じ方向を見るように改善することです。

Aさんの場合、奥様は、自分の言動の源泉(真の理由)に気づいていなく、無自覚で、なんの悪気もなく、ヴァンパイア化しているのだと思います。
お互いにとって、同じ方向に進むためには、まずは奥様の心の奥の声に耳を傾けることです。そうすれば、どの方向に進んだらいいのか、そのために、どう御(ぎょ)(リード)すればいいのかが分かるでしょう。
しかし、エネルギー不足だとヴァンパイア化し、他からエネルギーを吸い取ろうとするのは、奥様のBさんだけではなく、Aさんも一緒です。
Bさんとお互いにエネルギーを与え合うエネルギー交換(交歓)がなければ、Aさんもヴァンパイア化して、仕事や他人からエネルギーを吸い取ろうとするでしょう。現に、今、仕事で起きていることも、それが原因のひとつでしょう(実際に、仕事上の人間関係のトラブルがあったばかり)。

会社のスタッフを叱って、気持よくなっていたら、それは相手からエネルギーを吸い取った証拠です。お客さんにサービスをして、『いいことしたなぁ』と満足感に浸っていたら、それもヴァンパイア化している証拠です。あの人と一緒にいると、楽しい、ワクワクする、癒される…。と浸っているときも要注意。ヴァンパイア化しているかもしれません。

仕事でエネルギーを補給しようとするほど、不安や恐怖や虚しさも大きくなってしまうでしょう。しかし、家庭からエネルギーが補給できていたら、自然と安心感と幸せに包まれるでしょう。当然、むやみに感情も乱れることもありません。だからこそ、人の相談にのったり、仕事をこなすよりも、まず奥様のBさんとのパートナーシップをもう一度、改善することが、優先なのではないでしょうか?

かといって、奥様からエネルギーが欲しいからといって、「あれしてほしい、これやってくれ」と自分を変えずに、相手にばかり要求していたら何も変わらないでしょう。むしろ、それはBさんからエネルギーをさらに奪うだけです。ただただ、ひたすらに、奥様のために、心をこめて、接することが重要です。

経営者の職業病の中に、負けたくないという症状があります。自分からすることで奥様への敗北感を味わってしまう人もいます。もしかすると、様々なネガティブな感情がわき出るかもしれませんが、それを乗り越えることも大事な一歩ですね。

さらに、奥様がエネルギー不足なほど、さらなる愛情欲求の激しい言動をすること(以前よりも悪化したように感じる場面)があります。ある意味それは、今までのパートナーシップの成績が発表されているだけ。関係性を改善しようとしているのですから、その結果を受け入れるしかありませんね。受け入れずして進める道なしですから。

ただし、『俺は受け入れるから、お前は俺にエネルギーをよこせよ』って交換条件のようなことをハラの中で思っていたら、奥様の潜在意識は確実に気づき、さらなる愛情欲求の激しい言動をするでしょう。

常に、奥様の言動の源泉(真の理由)を見て、心の声を聞いてください。そして、エネルギーを惜しみなく注いだたらいいと思います。そうすれば、いつかコップに注がれた愛情という水があふれ出すように、パートナーシップが劇的に変わる日が訪れるでしょう
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 というようなことを話すとAさんは、ここ最近の奥様Bさんの言動の源泉(真の理由)を静かに振り返って反省し、自分のすべきことを理解していました。

その後、経営者Aさんと奥様Bさんは、お互いに徹底的に話し合ったそうです。Aさんは、家の中でもほとんど仕事のことばかり考え、作ってくれた食事も、仕事のことを考えながら食べてしまっていることなどから、いかに自分勝手だったのかを反省していました。一緒にいても、一緒にいなかったのです。Bさんは、仕事を辞め、夢への衝動が単なる現実逃避なのだと自覚し、愛情欲求をするのではなく愛情奉仕をしようと、心を改めたとのことでした。

 こうした、最も身近で大切な人とのパートナーシップが変わってくると、他の人たちの関係性も大きく変わり始めます。なぜなら、最も身近で大切な人とのパートナーシップが、自分の人間関係のひな型(フォーマット)になるからです。

 

■男性は世界を動かし、女性は男性を動かす

今まで、数多の経営者の相談にのるときに、こんなことをお伝えしています。
経営者の最高のコンサルタントは奥さんです。奥さんの直感は300%正しいと思ってください。
つまり、自分が思う3倍鋭いものだと。奥さんの直感を具現化するのが旦那の役割です。ただし、奥さんの直感が地獄へ通じるときがあります。それは悪魔に変身している時です。
それとは反対に奥さんの直感が天国へも通じます。それは天使に変身している時です。

女性を天使か悪魔に変えるのは男性しだい。
男性を王者か愚者に変えるのは女性しだい。

まさに『男性は世界を動かし、女性は男性を動かす』のです。

以前、ある大活躍していたプロ野球選手が結婚してダメになった話があります。それまでは飛ぶ鳥を落とす勢いで数々の記録を残していたのにも関わらず、結婚してしばらくして2軍落ちてしまいました。そのご夫婦の友人から、直接教えていただいたのですが、奥さんが旦那さんの稼ぎを使って、自分のお店を開いたそうです。それから旦那さんは一気にダメになりました。奥さんが、いろいろやりたいという欲望を、旦那さんが全て受け入れ、それが優しさとばかりに甘やかしたのです。奥様は、エネルギーを旦那さんから自己実現に向けました。
なぜ、そうなったのか?それは旦那さんも奥さんも、お互いに向き合わずに、外の仕事に逃げたからです。
男性が成道(じょうどう)するには、女性の力が必要です。(もちろん、その逆もありえます。「伝説のホテル」で有名な鶴岡秀子さんのご家庭は、その役割が全く反対になっています。奥さんが成道しようとし、旦那さんが支えています)

お互いにヴァンパイアにならず、お互いにインスパイアできる関係を築ければ、自然と幸せな家庭になるでしょう。自然と仕事もうまくいくでしょう。自然と良い人生にもなっていくのです。そう、家庭と仕事は両立しかしないのです。


現役歯科医師による歯科医院の為の経営マーケティングクラブ「Doing(ドゥーイング)」
小田真嘉の「魅力経営コラム」2010年2月号より