成長コラム One Point Column

Doing連載魅力経営のヒント

第17回目:愛されて繁栄していく3つの戦略 (2010年12月号)
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■消えていくか、生き残るか、それは戦略次第

 先日、全国からお薬屋さんの関係者が集まり、「愛されるお薬屋さん」になるための経営勉強会をさせていただきました。2回目の今回は前回に引き続き、町の小さな薬屋さんから、漢方の道を30年以上も歩んでいる先生、調剤薬局を何店舗も経営している方々、健康食品のメーカーさんなど、意識が高く個性的な方々ばかりでした。

 みなさんの状況をいろいろ聞かせていただいたのですが、どなたも素晴らしい理想や良き思いがあり、大変な努力を続けられていました。しかし、「経営状況は?」と言うと、決して良いとは言えない厳しい状況の方もいらっしゃいました。
お店の立地もいい、本物の商品もある、専門的な高度な技術もある、並々ならぬ健康知識もある。そしてお心もいい。それなのに、一体なぜ、厳しい状況に陥っているのでしょうか?

その原因のひとつに、マーケティング(集客)をしていないこともあります。しかし、最大の原因は、それ以前にお店に「戦略」がないことです。
戦略がなければ、仮にマーケティングなどの戦術を駆使して、短期的にうまくいったとしても、次第に苦戦を強いられていくでしょう。逆に、戦略があれば、短期的には苦しいこともあるかもしれませんが、次第に有利な状況になっていくはずです。

 時代が変わるとき、その変化の波に巻き込まれ多くの企業が消えていきます。しかし時代が変わっても、繁栄し続けていく企業もあります。当然のことながら、時代が変われば、その時代にあった戦術をとる必要があります。しかし時代が変われども、変わらない繁栄の戦略が確かにあります。戦略を持たずに、目先の状況にひたすら対処するべく戦術を使っていく。これが消えていく大きな要因です。逆に自分自身と自社に合っている戦略をとり、その戦略に合った戦術をとって目の前の状況に対応していく。これが繁栄していく要因です。

 今回の「愛されるお薬屋さん」になるための経営勉強会の参加者の中に、非常に頭のキレる経営者Aさんがいらっしゃいました。Aさんは、ある商品で成功されていました。徹底的な市場分析をしたうえでターゲティングをし、綿密なマーケティングプロセスを組み上げ、莫大な広告費をかけ宣伝広告をし、来店したお客さんに心理学に基づく段階的なアプローチ販売、そして継続リピートするためのフォロー体制を確立していました。
とっている戦術としては非の打ちどころがないわけですが、去年まで効果があったにも関わらず、なぜかここ最近効果が薄いとのこと。逆に、お客さんが減っていき、新たなるお客さんを獲得すべく、次々に戦術をうっていくという、大変苦しい状況でした。
なぜ効果がなくなっているのでしょうか?それは戦略がなく場当たり的に戦術を使っているため、ずっとさらに効果的で刺激的な、戦術を使い続けなければならないからです。
そもそも戦いとはお互いに消耗戦です。戦い続ければ、自社もお客さんも市場も、どんどん疲弊していくだけです。Aさんは、戦術に長けていましたが、戦略がありませんでした。
では、勝てればどんな戦略でもいいのでしょうか?
間違った戦略をとれば、より激しく戦い、勝ったとしても傷だらけの勝者となるでしょう。正しい戦略ととれば、戦うことなくみんなが勝者となるでしょう。正しい戦略とは、自分自身と自社に合っている戦略です。自分自身と自社に合った戦略とは、「戦わずして勝つ」という、同業者ともお客さんとも戦わない戦略です。

 では、どうすれば、そんな戦略を取ることができるのでしょうか?小さい組織でも戦わない戦略を実行するのは可能なのでしょうか?
結論から言えば、小さい組織こそ、戦わない戦略をしやすいのです。そのためには、戦略と戦術の違いを知ることからはじまります。

 

■戦略と戦術の違いを知り、自分に合った戦略をとる

 世界で最初に戦略を使用したのは『孫子』だと言われています。「戦略」という言葉自体こそ出てこないものの、戦争哲学と数々の戦術を論じて戦略の思考法を示しています。
『孫子』は、今から2,500年ほど前、春秋時代末期の中国で生まれたものですが、いまなお、古今東西最高の兵法書として多くの人に読み継がれています。この孫子ので、最上の戦略について、このように語られています。

 「百戦百勝は善の善なるものに非ざるなり。戦わずして人の兵を屈するが善の善なるものなり」と。つまり、最上の戦略とは「戦わずして勝つ」ということです。競争しない。比べない。これこそが戦略の真髄であり、本来、戦略とは戦いを省くことなのです。

「戦略」と「戦術」は違います。
戦術とは、相手を負かして、自分が有利になるための「術(テクニック)」です。
戦略とは、相手と共に繁栄するために、自らを成長させていく「道」です。

どうすれば、相手と共に繁栄する「戦わずして勝つ」戦略をとることができるのでしょうか?そのためには、飛び抜けた才能や能力も、百戦錬磨の経験も不要です。むしろ、それがあるがゆえに、自分に合った正しい戦略をとれずに、場当たり的な戦術に走ってしまうこともさえもあります。戦略とはシンプルなものです。誰でも「戦わずして勝つ」戦略をとることができます。

どんな企業でもできる「愛されて繁栄していく戦略」をとるための、3つのステップがあります。

1.「戦いの落とし穴」にハマらない
2.「戦い」を明確にする
3.自分に合った「戦略」を立てて、実行する

まず「戦いの落とし穴」にハマらないことが第一歩です。
戦いの落とし穴とは何でしょうか?それは、褒められたい。認められたい。凄いと思われたい。という自我の拡大欲求です。

 戦いの落とし穴にハマると、「自分を大きく見せたい!大きく見てもらいたい!」という衝動で動き、戦って得られる快感と高揚感と満足感の幻想に酔っていきます。これは中毒のようなもので、より大きな刺激を終わりなく求めるようになります。するとさらに周りと競うことを意識するようになり、やがて激しく争い始め、徹底的に比べるようになります。そうやって得た優越感よって、自我を大きくしていくのです。
カンタンに言えば、戦わなくてもいい戦いを繰り返すようになるのです。そして、次第に身も心もボロボロになり、あるとき燃え尽きたように敗者になり、勝ち得てきた全てを失うのです。

 「戦わない戦略」は、ポジショニング戦略やブルーオーシャン戦略などとしても考えられ、大企業の経営にも積極的に取り入れられていますが、これにも大きな落とし穴があります。それは戦わなくてもいい空き地を探して、そこに自分を無理矢理に押し込んでしまうことです。空き地が先にありきで考えることで、自分の本質からズレれた活動を強いられます。戦わずして勝つかもしれませんが、得たくないものを得て、失ってはいけないものを失ってしまうことがあります。

 では、どうすればいいのでしょうか?それは、自分にとっての「戦い」を明確にすることが大事なのです。そのためには、自らに「戦い」の目的と意味と意義を問うこと。次の4つの問いが、そのヒントとなるでしょう。

1)私たちは、誰(何)に勝つのか?
2)なぜ、勝たなければならないの?
3)勝てば、どうなるのか?
4)どうしたら、勝てるのか?

この4つの問いの答えによって、戦略は根本から変わってきます。
それでは、ここで一緒に自らに問いかけていきましょう。


1)私たちは、誰(何)に勝つのか?

生き残るために蹴落としたい競合他社(ライバル)?
過去に去って行ったお客さん(患者さん)?またはスタッフ?
これから獲得したいお客さん(患者さん)?
私たち自身の人生? 業界の悪習慣? おかしい常識?

 

 

2)なぜ、勝たなければならないの?


生活していくため? 生きていくため? お金を稼ぐため?
大切な人たちを守るため? 世の中を立て直すため?

 

3)勝てば、どうなるのか?

儲かる?豊かになる? 英雄(ヒーロー)になれる?
幸せになる? どのくらい成長できる? どのように世の中が変わる?

 

4)どうしたら、勝てるのか?
 

正しい分析をして、正しい戦略をつくり、正しい行動をする?
自らの限界に挑戦し、力の限りを尽くす? 仲間をつくり、協力しあう?
時の運に任せる?勝利の女神を待つ? 自分たちは何をすべき?

 

参考までに、魅力経営を目指し「戦わずして勝つ」を実践しているある経営者は「大切な人たちを守るために世の中を立て直し、周りと戦わず共存共栄して自らの限界と戦う」というような姿勢ではないかと語ってくれました。
大事なのは、現時点での問いの答えです。自分にとっての「戦い」の答えを明確にしたら、次は自分に合った戦略を立てることが重要です。ここでは、時代が変わっても、変わらずに繁栄するための3つの戦略をご紹介します。

1)独自化:比べられない唯一無二の存在になる
2)徹底応援:お客さんの人生が豊かになる応援を徹底的にする
3)共進化:お互いに協力しあって成長していく

 

■1)独自化:比べられない唯一無二の存在になる

 そもそもなぜ、戦ってしまうのでしょうか?どうして戦いに巻き込まれてしまうのでしょうか?それは、周りと比べているから、周りから比べられているからです。

 今回の「愛されるお薬屋さん」になるための経営勉強会の参加者の中で、「この不況で、お客さんの財布のひもが固くなって、安いモノしか売れなくなった。どんなにいい商品を紹介しても、うちでは買わずに同じような成分の入った商品をインターネットで格安で買っているようです。もちろん商品の質は天と地ほどの差がありますよ。いやー、正直参っています」と話してくださった方がいらっしゃいました。
確かにそれはあるかもしれません。しかし逆から見れば、そのお店はお客さんから値段でしか選ばれていないということです。お客さんは商品の本当の価値が分からず、値段でしか商品を判断できていないだけ。だから値段が安いという基準だけで選ぶしかなくなっているのです。

非常に極端な話ですが、これからの戦略は差別化するか、独自化するかの2つのどちらかです。
「安いから、コレにする」と値段に差をつけて選ばれるのか?
「いくらでもいいから、あなたにぜひお願いしたい」と他にないから指名されるのか?

 もちろん前者の低価格戦略というのも確かにあります。しかし、その戦略を取り続けられるのは潤沢な資本がある超・巨大企業だけです。

大切なのは『自分のお店を、どんな理由で選んでほしいのか?』ということを最初に決めることです。価値観が多様化していく今の時代、万人受けするビジネスはなくなりました。「どんなお客さんのお役に立つお店にしたいのか?」お客さんを選ばなければ、お客さんからも選ばれることはありません。その視点から、お客さんに選ばれたい理由を明確にしていくこと、その理由を具現化していくことが重要になってきます。
お客様に選ばれる理由とは、自らの存在目的(理由)と一緒です。つまり、選ばれる理由の探求と創造は、存在目的の探求と価値創造となっていくのです。

エクスペリエンス・マーケティングを伝導しているマーケッターの藤村正宏さんは、独自化して戦わない戦略をするためのヒントとして、こんな質問をしています。

「たくさん似たような商品があるなかで、お客さまは、どれを買ってもいい、あるいはどれも買わないという選択肢がありながら、どうしてあなたの商品を買わなければならないのか?」

例えば、これを歯科医院の経営で考えるのであれば…

「たくさん似たような歯科医院があるなかで、患者さんは、どこで治療してもいい、あるいはどこでも治療しないで我慢するという選択肢がありながら、どうしてあなたの歯科医院に行かなければならないのでしょうか?」

 どうして、お客さん(患者さん)にとって、あなた(のクリニック)でなければいけないのか?その理由の中に、今後の戦略の根幹となるヒントが隠れています。
例えば「高齢者にとことん優しい」「安心して一生涯任せられる」「毎日でも行きたいぐらい楽しい」「家族みんなで通い、通うほど家族の仲が良くなる」「居心地がよくて、ついつい時間を忘れてくつろいでしまう」「毎日が楽しくなって運が良くなる」などです。

 今の時点で「今できている、できていない」は全く関係ありません。最初に決めておくのが重要なのです。後はそのために、毎日工夫改善していけばいいだけです。もちろん違っていると思ったら修正すればいいだけのことです。そんな毎日の積み重ねをしていくことで、結果として比べられない唯一無二の独自の存在になっていくのです。

 そうやって独自の存在になっていくと同時に、あることも大事になってきます。それが自分たちの存在を周りに知ってもらうということです。

 

■知られていなかったら、存在していないのと一緒

どんなに、素晴らしい活動をしていても、それが知られていなかったら、お客さんにとって活動していないのと一緒です。お客さんにお店のことを知られていなかったら、お店は存在していないのと一緒です。思いが伝わっていなかったら、お客さんにとってみたら思いがないのと一緒です。商品のこだわりと品質が伝わっていないなら、そこまでの価値しかない商品と一緒です。どんなにいいサービスをしても伝わっていなかったら、お客さんにとってはサービスされていないのと一緒です。それでは自己満足で終わりです。

では、どう知ってもらうのか?どう伝えるのか?そしてどう伝わっているのか?
ここで重要なことは、術(テクニック)を駆使するよりも、純粋な思いをストレートに伝えてみることです。

以前、私の家の近くに全くお客さんが入っていないハンバーガー屋さんがありました。お店もオシャレで、なおかつファーストフードチェーン店のハンバーガーとは違って、かなりこだわって作っているようでした。さらに人通りの多い路面にあるお店で、非常に目立っていました。にもかかわらず、店内はいつもガラガラ…。商品原価と家賃と人件費とを単純に想定しても、そう長くはないだろうなぁと思っていました。

しかし、ある日から一変するのです。急にお店がお客さんでいっぱいになったのです。いつお店の前を通っても連日いっぱい。凄いのは昼過ぎから夕方にかけてもいつも満席状態。通常お客さんが入らない時間にも関わらず…。宣伝広告を打ったわけでもなく、商品や内装を変えたわけでもない。それなのに一体なぜ?何が起きたのでしょうか?

実は、変えたのはひとつだけでした。それは「立て看板」です。その看板には手書きで大きく、こう書かれていました。

「Cafeとしても使ってね」

非常にシンプルなメッセージ。しかし、これが大ブレイクのきっかけでした。なぜなら、お店にいるお客さんのほとんどがドリンクを頼み、カフェとして使っていたからです。もちろん食事をされている方もいらっしゃいました。お客さんのイメージの中で、ハンバーガー屋さんは、時間のないランチタイムに、手っ取り早くハンバーガーを食べるところという固定概念があったと思うのです。

ここからは私の想像です。もし、その店長さんに「お客さんに、あなたのお店をどう使ってほしいですか?」と聞いたときに、素直に「そうですね。ハンバーガーにこだわっているのは当然なのですが、実はドリンクもこだわっているんです。だから、カフェとしても使って頂けると嬉しいですね」と言ったと思います。店長は、お客さんへの純粋な気持ちを素直に伝えようと、立て看板に「Cafeとしても使ってね」と書いた。お客さんは本当に素直な行動をとるものです。純粋に思いを伝えるほど、純粋に動いてくださいます。大切なことは、下手でも不器用でもいいから、純粋にお客さんにどうなって頂きたいのかストレートに伝えてみることです。
このハンバーガー屋さんはカフェとしての利用が急増し、同時にハンバーガーの注文も合わせて上がっていました。明らかに経営状態が良くなったはずです。

この話には続きがあります。実は、このお店には姉妹店がいくつかありました。その姉妹店もお客さんが入っていない状況でした。ある日、姉妹店の前を通ると、路面のガラスに「カフェとしてもご利用いただけます!」と、巨大なゴシック体のパウチされたパネルが張られていました。しかし、店内はガラガラ…。
なぜ、先ほどのお店はお客さんが入り、マネした姉妹店は全くお客さんが入っていなかったのでしょうか?
それは、「カフェとしても使って頂けると嬉しい」という純粋な思いではない、別な何かが伝わっていたからでしょう。手法にこだわるほど、大切な思いが失われていきます。

 

■思いは手法の上流にあり!

友人の演出家からこんなことを教えて頂いたことがあります。「思いは手法の上流にあり」と。「思い→手法→成果」の順で流れているから、手法を選ぶ前に、どんな思いがあるのかで成果は決まるのです。善なる思いであれば、自ずと正しい手法が見つかり、正しく伝わっていくのです。「とにかく、お客さんを集めたい」という思いで、手法を選んだなら、お客さんには「あぁ、客集めに必死なんだな」という思いが正確に伝わります。ここが極めて重要です。人に喜んでいただきたくて何かをするのと、人を集めるために喜ばせるようなことをするのとでは、たとえ同じことをしていても結果は全く違ってきます。

以前、ある飲食店ビジネスを一代で大成功させた創業社長Bさんとお話しさせていただいたときのことです。当時、私も飲食店を経営していましたが全くうまくいっておらず、Bさんにいろいろと経営哲学を教えて頂いていました。

Bさんは、幼少期から並々ならぬ苦労をされており、創業から軌道に乗るまでのプロセスは、小説や映画になるほど波乱万丈の奇跡のストーリーを歩まれていました。そんな体験からのお話だったので、大変貴重な学びになりました。数々のお話しの中で最も衝撃を受けたことがあります。Bさんにふと「成功する前と後では、何が変わりましたか?」と聞いてみたときです。Bさんは何げなく、こう話してくださいました。

「んー、何も変わってないなぁ・・・。ただ、変わったといえば、人に何かプレゼントするときに、お金を気にせずにあげたいなぁと思うものをあげられるようになったことかなぁ~」と。
Bさんは生活に困っていた幼少期から、周りに喜んでもらえることが本当にうれしくて、常に喜んでもらえるようなことをしていたそうで、そのひとつがプレゼント癖だったそうです。お金が全くない頃でも、いろいろ工夫していたとのこと。

そしてBさんは最後に、こうお話ししてくださいました。

「巷には、成功するためのビジネス手法が山ほど並んでいるけど、実際に成功する人は本当に少ないよね。なぜかと言えば、手法以前の思いがズレているからじゃないかなぁ。自分が成功したいと思ってやっても、うまくいかないんだよね。喜んでもらうのが嬉しくて、それをやって成功するのと、成功するために喜んでもらおうとするのは全く違うからなぁー。」

 なぜ、その当時の私が、いくら最新の経営手法を取り入れてもうまくいかなかったのか、腑に落ちた瞬間でした。お店に人を集めるためにやる。自分が儲かるためにやる。そのために人を操作する手法をとる。そんな「自分だけ、お金のためだけ」という思いが、手法に乗り、正確にお客さんに伝わっていたから、悪くなるべくして悪くなっていたのでした。思いのない手法は凶器。思いは手法の上流にあるのです。

だからこそ、自分のお店に来てくださるお客さんに、どんな思いをもっているのか明確にすることが戦略の土台になります。

・来ていただいて、どんな時間を過ごして頂きたいのか?
・みなさんに、どうなっていただきたいのか?
・そのために私たちはどんなことを、どんな気持ちでさせて頂くのか?

それを自らに問いかけること。そして、その思いを素直にお客さんに伝えてみることです。それを紙に書いて張るもよし、配るのもよし。手法は何でもありです。まずは知ってもらうこと。身近なところから伝えてみましょう。

その次に重要になってくることがあります。それは「思いが正確に伝わっているか?」ということです。伝えたことが正しく伝わっているのか確認、検証、チェックしてみることです。そして伝わっていないようであれば、どうしたら伝わるのか?考え、修正、改善しましょう。
それを繰り返しながら、次第に信頼される存在になっていくことが大切です。では、どうすれば信頼される存在になることができるのでしょうか?それは、お客さんを徹底応援することです。

 

■2)徹底応援:お客さんの人生が豊かになる応援を徹底的にする

人が集まってこないのも、商品やサービスが売れないのも、成果につながらないのも、原因の根本は、お客さんに信頼されていないからです。
逆に言えば、信頼されれば集客にも、売上にも、経営にも困りません。むしろ集客せずとも、人が集まってくるようになります。売上を上げようとせずとも、必要な売上が後からついてきます。スタッフにいちいち細かく指示命令せずとも、スタッフは自ら考え行動し、問題を解決していくでしょう。
では、信頼されるには、どうしたらいいのでしょうか?それが、徹底応援することです。

 実は今回の参加者の中に、長野県にある伝説的な薬屋となりつつあるN子さんがいらっしゃいました。N子さんの地域では、知らない人がいないのはもちろん、お店があることが、地域の誇りになっているような、絶大の信頼があるお店なのです。
同業者の方々は、「あのお店は本当にすごい!」「自分のお店も、あんなお店にしたいけど、マネできない」「一見、どこにでもあるようなお店だけど、どこにもない世界で唯一のお店ですね」と口ぐちに絶賛しており、メーカーさんもお客さんも、N子さんのことを悪く言う人は一人もいないようです。N子さんとお会いすると分かるのですが、まさに薬屋業界のマザーテレサのような方と言っても過言ではないかもしれません。

 そんなN子さんのお店には、顧客名簿がありません。広告宣伝も一切もしません。DMも送りません。売り込みしません。一切の集客手法を使いません。それなのに、開店から閉店まで連日連夜ひっきりなしにお客さんが来店し続けます。人を集めずとも、自然と人が集まってくるお店なのです。N子さんは一体、何をしているのでしょうか?
N子さんは、薬を売っている薬屋さんをやっているのではなく、お客さんの心と体が健康になるために、徹底的に尽くしている健康応援者なのです。

毎朝8時から、足や具合が悪いお宅を車で1件1件回ります。世間話をしながら、「操体(そうたい)」という痛みを和らげる健康マッサージや、リンパや足裏マッサージをします。必要ならば健康状態を丁寧に聞きながらアドバイスもします。もちろん全部無料です。さらには、食事の準備が難しい高齢者のご家庭には、N子さんが前日につくった煮物やおはぎを置いてきたりするそうです。
こうしてお店のオープン時間の10時ギリギリまで、できるだけ訪問します。そうしてお店に10時に戻りシャッターを開けると、お店の前にはすでに待っているお客さんがいて、息つく暇もなく、今度は店内で健康相談やマッサージや健康アドバイスをしていきます。これらはもちろん全部無料。さらに、お茶やお菓子を出したりもするそうです。ちなみに、お客さんがお菓子やお土産を持って来てくださるので、それを再びお客さんたちと共に頂くそうです。もちろん健康食品や漢方が必要な方は買っていきます。
「このお店は、本当に居心地がいい」と何時間もいらっしゃる方もいるそうで、お客さん同士が仲良くなることも多く、健康食品メーカーの営業さんとお客さんが仲良くなることも珍しいことではないそうです。こうして、自然とたくさんの人たちが集まってくるお店であり、地域にあったらいいお店ではなく、なかったら困るお店になっています。お店が地域から愛され、地域を元気にしているのです。

 N子さんは、自分の損得を遥かに超えて、お客さんのために尽くして、尽くして、さらに尽くす薬屋さんだと感じました。それが、顔や全身の雰囲気にその温かい善なるお心が現れていました。
そんなN子さんに「何でそこまでできるのか?」伺ったところ。N子さんは本当に素敵な笑顔で、こう答えてくださいました。
「昔から、うちの母がやっていたからです。いや、私はまだまだです。もっとできることがあると思いますし、できていませんね。みなさんの相談にのっても、お役に立てないこともいっぱいあります。いつも勉強不足だなって痛感しています。まだまだです」
N子さんは、本当に謙虚な姿勢でなおかつ、身の内に一本柱が立っていて、善なる思いで働いている方だと心から感じました。

 お客さんを応援するということは、商品を販売することでも、サービスを提供することでもありません。なぜなら、お客さんは商品が欲しいわけでも、サービスが受けたいわけでもないからです。欲しいのは商品を使って変わる、さらに豊かになった毎日の生活です。サービスを受けて変わる、さらに幸せになるその後の世界(人生)です。
だから、お客さんを徹底応援するということは、お客さんの人生が豊かになる応援を徹底的にするということです。健康食品を売るのではなく、健康な日々になるようなお手伝いをする。そのために健康習慣になるようにサポートすること。それがどこまでできるのかが、徹底応援ということです。

 歯科医でいうのであれば、単に歯を治療して終わりなのではなく、歯に悩まずに健康な日々をおくれるようなお手伝いやサポートすること。もっと言えば、家族で心と体に良い食事ができるような応援をする。できるだけ長く現役を続けられ、充実した年を重ねるお手伝いをどこまでできるのかが、徹底応援ということです。

徹底応援するには、お客さんの日々の生活を知らなければできません。何に悩み、どんなことを望んでいるのか知ることが第一歩になってくるでしょう。そして、これからの時代は、お客さんと共に自分たちも一緒に育っていく時代に突入しました。それが次の共進化をしていくことです。

 

■3)共進化:お互いに協力しあって成長していく

今回の全国からお薬屋さんの関係者が集まった「愛されるお薬屋さん」になるための経営勉強会は、静岡県の伊豆半島の先端にある松崎町という小さな町の薬局「くすりのハヤマ」の端山晋一さんが開催してくださいました。端山さんとは4~5年のお付き合いになり、以前、松崎町に地域活性化の研修にも行かせていただきました。

端山さんは非常に勉強熱心で、どうしたらお店に来てくださるお客さんに笑顔になって頂けるかに真剣に取り組んできました。ある時、こんなことをふっと思ったそうです。当然のことながら、みんなどこか体調が悪くなってから薬局に来る。そして渡す薬も体によいとは言えない。果たして、それで薬屋として、お客さんのことを本当に応援していることになるのだろうか?そんな根本的な疑問にぶつかったのです。
そこで端山さんは決意しました。「薬を売らない薬屋」になるということを。以前から力を入れていた健康食品や漢方を前面に出し、健康マッサージを始めます。そして何よりも始めたのが、健康になるための心の持ち方の伝導です。今お店の玄関には、端山さんの直筆で「笑顔があなたの一番の薬」と書かれています。以前よりも増して、用がなくてもどんどん人が集まってくるようになり、松崎町では町の笑顔中心スポットになっています。

すると、周辺地域の小中学校やPTAや老人会から、そして全国の健康食品メーカーさんや薬屋さんから、講演の依頼が続々と入ってきたのでした。端山さんの「心を健康にする」講演はどこにいっても大絶賛、笑が絶えず、最初の休憩時間で次の依頼が来るほどに…。

端山さんは「いや、日本中にますます笑顔が広がって、ますます心が健康になってほしいなぁと思います。そうしたら勝手に体の健康も広がっていくでしょう。最終的には、薬屋さんがない日本になること。自分たちの存在がなくなることが、もしかして究極のゴールかもしれないですね。でもまぁ、そうなったら生活に困るんですけどね」と、いつものように明るく笑いながら話してくれます。
実は、そんな端山さんの影響を受けた同業種の有志たちが、業界を変えようと立ちあがり、今回の勉強会へとつながったのでした。

これからの時代に必要となってくるのは、共に学び、共に助け合い、共に分かち合う仲間です。自力だけで切りひらいてく時代は終わり「コラボレーション(Collaboration)」が重要になってくるでしょう。コラボレーションとは言霊でいうと「コ・レボリューション(Co-evolution)」です。「コ(Co)」とは「共に」ということです。「レボシューション(evolution)」とは「進化する」ということです。つまり、コラボレーションとは「共に進化していく」ということです。

 最初は、まず志という小さなタイマツをかかげることです。すると、やがてその光と温かさに引き寄せられて、人が集まってくるでしょう。そしてその中から、志の炎が飛び火して、共に歩む仲間が現れます。まさに志の炎は、いくらでも人に分けることができます。こうして集まった炎が、さらなる大きな塊の炎のストームとなり、次第に周りを巻き込み、照らしていくでしょう。

愛されて繁栄していく3つの戦略とは「独自化:比べられない唯一無二の存在になる」「徹底応援:お客さんの人生が豊かになる応援を徹底的にする」「共進化:お互いに協力しあって成長していく」でした。

ただし、この戦略にはある欠点があります。それは成果が目に見える形として現れるまで、時間がかかるということです。確かに戦術を駆使すれば、結果はすぐにでるでしょう。だからこそ、この戦略は、未来を信じて続けることが一番の要かもしれません。

そして、愛されて繁栄していくとは、周りを愛して、周りに繁栄を広げていくことができる自分になるということです。そのために自分自身と戦っていくこと。それこそが「戦わない戦略」だと思うのです。この戦いには終わりはありません。物質的な戦利品もないかもしれません。むしろ損することも多いでしょう。しかし、全ての人たちの心にじわーっと温かい幸せが残るでしょう。それが今までの最強を目指した経営術ではなく、これからの最高の生き方を目指す経営道なのだと思うのです。

 

現役歯科医師による歯科医院の為の経営マーケティングクラブ「Doing(ドゥーイング)」
小田真嘉の「魅力経営コラム」2010年12月号より