成長コラム One Point Column

Doing連載魅力経営のヒント

第20回目:エネルギーの法則(2011年3月号)
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■頑張るほど逆効果になってしまう経営者

 昔からの友人に経営者Aさんがいます。Aさんは持ち前のビジネスセンスと豊富な知識に加え、人望の厚さからスタッフからもお客さんからも絶大な信頼を得ている方でした。

 先日、そんなAさんの相談に乗った時のことです。いつもはエネルギッシュで、明るく元気なのですが、その時ばかりは様子がちょっと違っていました。
Aさんは昨年から、ある新規事業に力を入れていたのですが、今年に入り突然、雲行きがおかしくなり頓挫(とんざ)したとのこと。それだけではなく、長年一緒に頑張ってきた仲間たちが離れていったり、社内の重大な問題が発覚したり、お客さんとのトラブルから裁判沙汰になったり…。それはもう散々な状況でした。
Aさんに現状を打破するために考えていることを聞いたところ、数々の危機を乗り越えてきた百戦錬磨だけあって、適切な対策をいくつも考え、既にもう手をうっていました。
その対策は素晴らしく的確で、正しいことを正しくしている。経験豊富なAさんも改善していく確信もある。しかし、なぜかやればやるほど、思いとは裏腹に問題が大きくなっているとのこと。何が原因なのでしょうか?

 その答えは、一目瞭然でした。
それは、Aさんがエネルギー切れだったことです。

 ここでいう「エネルギー」とは、元気さ、明るさ、温かさ、純粋さ、幸福度、前向きさ、気持ちの軽さ、意志の強さ、魅力、活力…などを含んだモノを例えています。
エネルギーが切れていると、やればやるほど、むしろ逆効果になっていきます。不必要なことをやってしまい、事態はさらに悪化していきます。
エネルギーに満ちていると、やっている以上に、スーッと道がひらけていきます。自分が本当にすべきことが分かり、流れにさらに乗ることができます。
経営に必須なのは、経営者の努力と才能でも、豊富な経験と知識でも、広い人脈と後ろだてでも、潤沢な資金や優秀な人材でも、仕掛けと仕組みでもありません。もちろん無いよりはあった方がましです。しかし必要十分条件ではありません。最も重大な必須要因は、経営者がエネルギーに満ちていることです。

 では、どうすればエネルギーに満ち溢れた経営者でいられるのでしょうか?
それは、「エネルギーの法則」を知ることがヒントになります。

 

■エネルギーの五大法則

 エネルギーにはたくさんの法則がありますが、ここでは私自身が多くの経営者やビジネスマンの方々と出会って肌で感じたことと、先人たちから教えて頂いた叡智を元に「エネルギーの法則」としてお伝えします。正確には「エネルギー五大法則」で、以下になります。

【地の法則】エネルギーと形は互いに求める
【水の法則】上から下に流れ、留まれば淀む
【火の法則】気持ちを燃やせば高まって行く
【風の法則】与え合うことで、運ばれていく
【空の法則】エネルギーは時空を超えていく

 どれも、紙面だけでお伝えようとすれば、それぞれの法則ごとに全12回ぐらいの膨大な内容になってしまいますので、今回はこの中から、一番重要な最初の「地の法則」の肝になる部分について触れていきます。

 

■地の法則:エネルギーと形は互いに求める

 目に見ないエネルギーは、形を通して見ることができます。
私の場合、経営相談はほとんど社長室でさせて頂きます。その経営者のエネルギーの状況は全部、その社長室にあらわれています。シンプルに言ってしまえば、エネルギーがあると場が整っていて、エネルギー切れだと場が乱れています。

 以前、相談に乗った経営者Bさんは、次々に起きる会社の問題で、いつも頭を抱えていました。そこでBさんに日頃の仕事を細かく聞いていくと、あるクセがあることがわかりました。それが「とりあえずグセ」です。

例えば…、会社の書類や購読雑誌を、「とりあえず」机の上に重ねて置いておく。使った会議資料も、いつか使うかもしれないと「とりあえず」そのまましまっておく。家に帰ってからも、カバンから中身を出さずに「とりあえず」そのまま書斎に置いておき、翌日は前日のモノも「とりあえず」持って出かける。不要なモノかもしれないと思っていても、「とりあえず」とっておく。Bさんの机には、そのための一時的に保管しておく「とりあえずボックス」までありました。「とりあえずボックス」は後で整理しようと思っても、結局整理することはなく、ボックスの中身は溜まる一方です。ちなみに、そのとき拝見させていただいたボックスからはモノが膨れ、いつ雪崩が起きてもおかしくない状況でした…。

 エネルギーが切れると、思考と意識が低下し、何をやるにも惰性になりがちになります。だから「とりあえず」という「先延ばし」と「その場しのぎ」の2つの行動パターンに陥ります。そして、この「とりあえず」の積み重ねが、とりかえしのつかない事件につながる時限爆弾になっていくのです。

 Bさんには、「とりあえず」残しているモノは、実際にはほとんど使わない(正しくは、使えない)ので、「とりあえず」残していこうと思ったモノは潔く捨てる。「とりあえずボックス」もなくす。その場、その瞬間で、必要なモノと不必要なモノをはっきりさせて、即時処理することを伝えました。

 ちなみに、私が20代のときにたくさんの会社を訪問して「ビニール傘の法則」というのがあると感じたことがあります。

それは、問題が多発している会社ほど、傘立てにビニール傘(もしくは、しばらく使われていない置き傘)がたくさんありました。それは用意周到なのではなく、その場しのぎがクセになっている「とりあえず社員」や「行き当たりばったり社員」が多くいる場合がほとんどでした。

ビニール傘を買うときの状況を考えれば分かります。天気予報を確認せず「とりあえず」出社したら、途中で雨が突然降ってきた。そこで「とりあえず」雨をしのぐためにビニール傘を買ってしのいで、会社に到着。そして、使った傘を「とりあえず」会社の傘立てに置いておく。そして、そのまま置き忘れて…。こうして「とりあえず」が続き、どんどん傘がゴミとして溜まっていくのです。

 エネルギーが切れると、自分にとって何が必要で、何が不要なモノなのか分からなくなります。美意識が低下し、整理整頓されていなくても、モノが壊れていても、汚くても平気になります(正確には、無意識に場を乱したり、汚したくなるのですが…)。いつもいる場所が乱れていくと、ごちゃごちゃ人の悪気地や不平不満を言ったり、どうしようもないことをグルグル考え、悩むようになります。こうして、場がより一層乱れていきます。

 そもそも、身の回りの状況は、その人の頭の中を表わしています。

オフィス、机の上、家、車が散らかっているのは、思考が分散して、エネルギー切れになっていることがほとんどです。また、机の引き出しの中、ファイル棚やロッカーの中、家の押入れ、車のトランクの中が散らかっているのは、心もエネルギー切れで、感情が乱れやすくなっています。
例えば、瞬間湯沸かし器のようにすぐに怒ってしまう(そのあと言い過ぎたと後悔する)。常に何かをしていないと落ち着かない(スケジュールをぎっしり埋めたがり、空いている時間があると心配になる)。漠然とした将来への不安がある(流行っているからという理由だけで、何でも取り入れようとする)。人を信用・信頼できない(部下に仕事を任せられず、何でも自分で背負いこむ。任せたとしても、途中で何度も首を突っ込み、結局自分でやってしまう)。など、他にもあげたらキリがありません。

 場をキレイな状態に保つことは、高い意識を保つということです。
場を整えてキレイにしようと思えば、自然と意識もエネルギーも高まっていきます。

 

■家を変えたら、会社が変わった

 以前、社長夫人Cさんから貴重なお話を伺ったことがあります。
今から数十年前のこと、旦那さんは小さな町の清掃会社を経営していました。仕事も非常に少なく、仕事が回ってきても、条件が良いとは決して言えない依頼ばかりでした。さらに当時、働いている社員と言えば、どこにいっても仕事が長く続かないヤンチャな若者ばかり…。やっと入ってきた少し良い条件の仕事もトラブルになり、逆に出費になってしまう始末。それでも必死に頑張っている旦那さんを見て、奥様のCさんはとても心苦しく思っていました。
経営も日に日に苦しくなり、清掃員以外の全てのスタッフに辞めてもらうことに。その空いた事務と営業などの穴をCさんがカバーすることになりました。
Cさんは少しでも良くなるようにと、難しいビジネス書を読んだりして、営業も積極的に行いました。しかしそれでも自転車操業すらならず、まるでチェーンが外れた自転車を漕ぐかのように空回り。何をやっても前に進まず、結果につながらない苦しい状況が続く毎日でした。
旦那さんと顔を合わせれば会社のことで喧嘩ばかり、それは高校生の二人の子供たちにも伝わり、二人は次第に家に帰ってこなくなりました。Cさんの脳裏には、何度も「離婚(・・)」の文字が浮かびました。

そんな時です。ある仕事が入って来ます。その町でも指折りにうまくいっている経営者の自宅のエアコン清掃の依頼でした。Cさんは、見積もりに伺ったときに、あることに気づきます。それは、家中の隅から隅まで掃除が行き届き、整理整頓されてキレイだったことです。Cさんは、その奥様に「お手伝いさんは、週何回呼んでいるのですか?」と聞くと、「お手伝いさんは頼んでいませんよ。全部自分でやっています。私ができることといえば、主人が良い仕事がしっかりできるように、家を良い環境にととのえることぐらいですから。経営者は本当に大変な仕事。せめて家に戻ってくれば気持ちが軽くなるように、キレイに家をととのえておくのが私の仕事だと思っています。」とお話してくれたのでした。
その話しに感心したCさんは、自宅に戻ってみると…、驚きました。あまりにも家が汚かったからです。モノは散らかり、ホコリとゴミは溜まっていました。Cさんは思います。「主人が清掃会社をしているのに、家がこんなに汚いなんて…。私がやるべきことは、営業で清掃の仕事をとってくるよりも、家をキレイにととのえることでは…」そう思い、仕事から戻った夕食後の2時間、家の掃除をするようになります。

毎朝続けていくとCさんは、2つのことを思うようになります。
「旦那にも家を掃除してほしい」ということと「私をもっと認めてほしい」ということです。

旦那さんは、自分の家の掃除に関しては無関心でした。そんな旦那さんにCさんは「あなたも少しはやってよ!私はこんなにも一生懸命やっているのに…。そもそもなぜ、こんなに頑張っている私のことを見てくれないの?もっと褒めてくれっていいじゃない!」という気持ちが強くなっていきます。その一心でCさんは、旦那さんがいる目の前をわざと掃除するようになります。その度に旦那さんは避けるようにその場からいなくなるか、喧嘩するかのどちらかでした。なぜかCさんが、家の掃除をするほど、事態はより深刻になっていったのです。

 ある時、Cさんは思います。「以前伺ったあの奥様のことをもう一度、思い出してみよう。そう言えば、毎朝(・・)の日課が…みたいなこと話してくれていたわ。今は時間がないから夜に掃除をしていたけど、朝にしてみよう!」と。
こうして夜はできるだけ早く寝るようにして、2時間早く起きて掃除をするようにしました。旦那さんが寝ているので、起こさないように音を立てないように心がけるようにしました。掃除の時に出している音に意識を向けると、自然と心が落ち着き、丁寧に掃除している自分がいました。

 そんなことを数日続けていると、ある変化が起きます。旦那さんが自分の書斎を掃除していたのです。そして、なぜか子供たちも家に帰ってくる日が増えていったのです。
「~してほしい(・・・)」「~くれ(・・)ない」「~して頂戴(・・)」と思いながらする言動の全ては、周りからエネルギーを奪っています。以前のCさんは、旦那さんと子供たちの気を引いて、エネルギーを吸い取っていたのでした。
逆に、心から相手のためを思いながら「~してあげよう」という善なる言動の全ては、自分と相手の両方にとってのエネルギー充電となります。

1カ月もすると、Cさんは毎朝掃除をする前に掃除機に「掃除機さん、今日も一緒にお掃除をよろしくお願いします。主人も子供たちも、そして私も居心地の良い家になりますように、どうぞお手伝いしてください」と手を合わせてから掃除をするようになっていました。

実は、その頃から会社である変化が現れます。トラブルばかり起こしていたヤンチャな若い社員が、仕事が楽しいと積極的に働くようになったのです。Cさんが掃除を心から楽しみ、掃除をさせて頂くことに感謝していたちょうど同じころだったので、Cさんは驚きました。
少しずつ、清掃の評判も良くなり、仕事もポツポツ入ってくるようになりました。それから数年のうちに、小さな清掃会社は、地域でも指折りの大きな会社へと成長していくのでした。

旦那さんである社長は、社員に言うそうです。「我々は単に汚れを落とす掃除をしているのではない。不幸や不運の元を一掃し、幸せと幸運が広がる清掃をしている」と。

 

■3つを「ととのえる」て、その場をエネルギースポットに変える

 私は経営コンサルティングという仕事がら、たくさんの経営者やその奥様と会っていると、パワースポット巡りにハマっている方ともよく出会います。もちろん、全国には神社仏閣やエネルギーに溢れている場所などすばらしい空間がたくさんあるので、パワースポットに行くことはいいことだと思います。

 しかし中には、パワースポットに行ってエネルギーを充電するという意識があまりにも強い方がいらっしゃいます。そのような方のご自宅にお邪魔すると、家がモノで溢れかえり、決してキレイとは言い難い光景を目にします。中には、開運や金運グッズや商売繁盛のアイテムを集め過ぎて、それによって家が散らかっているお宅もありました。多すぎる開運グッズによって場が乱れ、ご主人と奥様のエネルギーが切れ、それで逆に貧乏神と不運が行列をなしている…。という、何とも笑えない状況も中にはありました。

 パワースポットは行くものではなく、つくるものです。
開運グッツは集めるモノではなく、自分が周りの開運グッズになるものです。

そのためのキーワードが「ととのえる」ということです。
「ととのえる」には、3つの段階「整(ととの)える→調(ととの)える→斉(ととの)える」あります。

まずは形(場所、空間、モノ)を整えること。不要なモノを捨てて整理し、すぐに使いやすいように美しく整頓する。いわゆる整理整頓です。
すると、気持ちがスーッと落ち着いたり、心の調子が静まって調います。エネルギーに満たされると心は安心感でいっぱいになります。そうすることで、本来のあるべき姿へと斉っていくのです。

 掃除をして場を整えるということは、心を調えることです。
静寂な心に調えるということは、歩む道を斉えることです。

 先ほどの、清掃会社の社長夫人Cさんは、場をキレイにするだけではなく、自分の心を調え、旦那さんと子供の幸せをイメージして、幸せを祈りながら家を斉えていました。そのエネルギーが旦那さんの心に深く影響し、その波が経営する会社と、働くスタッフ、そしてお客さんたちに広がっていったのでした。

これは、あの儒教の四書五経『大学』の中での有名な一節「修身(しゅうしん)斉家(さいか)治国(ちこく)平(へい)天下(てんか)」と同じです。「大学」とは、孔子が弟子の曽子に教えたことを、曽子の弟子がまとめたものです。
「修身(しゅうしん)斉家(さいか)治国(ちこく)平(へい)天下(てんか)」とは、天下を治めるには、まず自分の心と行いを正しくし、次に家庭をととのえ、次に国家を治め、そして天下を平和にすべきであるという教えです。
この順番が、エネルギー切れ経営者にならないための「地の法則」の秘訣です。しかし、エネルギー切れのままムリに進もうとすると、「地の法則」のウラ側が作用するようになり、悲惨な結果につながるのです。

 

■「地の法則」のウラには「血の法則」が働く

 エネルギーが切れると、人は『エネルギーヴァンパイア(吸血鬼)』に変身しまいます。エネルギーヴァンパイアは、あらゆる手段で周りの気をひいてエネルギーを吸うようになります。
エネルギー切れして、じっと家に閉じこもりっきりの人もいますが、エネルギー切れ経営者は、「刺激病」に侵されたパワフルなエネルギーヴァンパイアになっている場合が多いです。彼らは積極的に吸血活動をします。

 数年前に、次々に夢を叶えている経営者Dさんと出会い、どうしても会社に来て、いろいろ見てほしいと強く誘われ、Dさんの会社に伺ったことがあります。
社長室に入ってソファーに座って早々、Dさんが「夢ノート」と呼んでいるぶ厚い手帳を私の前に置いて、あるページを開きました。そこには夢が100個びっしり書いてありました。Dさんはその夢を達成するたびに線で消して、さらに新たな夢を書き足しているとのこと。その夢ノートを広げながら、そこから1時間半、夢を達成してきた数々の武勇伝を息つく暇もなく、(一方的に暑苦しく)語ってくださいました(笑)。

 一通り話し終わると今度は、社員にも夢ノートを持たせて、夢を書かせている話しに…。社長室に数名の社員を呼び、彼(女)らのノートを開かせ、達成してきた夢を話させていました。その次は、ミーティングルームのカベに貼られた、今月みんなが達成した夢を書いた大きな紙と、会社全体での夢マップの説明に…。スタッフのみなさんは、お客さんや協力会社さんなどに、何回も話しているようで、慣れていてかなり上手でした。

Dさんの会社は、次々に夢を実現している凄い会社だと、方々から絶賛されているようでした。しかし、私には、社内の空気は重苦しく、スタッフは生気が薄く、どこか悲壮感が漂っているように感じたのでした。

 そもそもDさんは、なぜそんなにも夢にこだわるのでしょうか?

 それは、心から望んでいる夢を実現したいのではなく、周りから凄いと思われるようなことを達成して、その注目(賞賛や承認)を浴びて、それで自己重要感(自分は重要で凄い人物なんだという自己満足度)を高め、一時的なエネルギーを得るためでした。
つまり、Dさんにとって、注目を集めることができれば、夢なんて何でもよかったです。Dさんの夢リストの100個の夢は、エネルギーを吸い取る100本の牙(キバ)に過ぎないのです。

 エネルギー補給のために夢を達成しても、すぐ次の夢に向かいます。しかも、今まで達成した夢では満足できず、さらに大きく刺激的で凄い夢を周りに言いふらすようになります。そして周りも今まで以上のことを期待するようになります。すると本人もさらなる刺激の強いことをするようになります。こうして、さらに周りは、より…。これが「刺激病」の悪循環(悪夢のサイクル)です。

夢達成マシーンと化したDさんのエネルギー源は、周りからの注目です。それを自己満足に変換して動いているので、夢をエサにして周りからエネルギー補給できなくなったら、Dさんは禁断症状に襲われます。だから、周りの食い付きのいい夢(時にはボランティア活動)を探し、それを周りに見せびらかすようにぶらさげるのです。
そんなDさんの手口にひっかかり「凄いなぁ!」と思った瞬間に、Dさんに根こそぎエネルギーを吸われるのです。そしてエネルギーを吸われた人たちは、今度は自分たちもヴァンパイアに感染し、さらに家族、友人など周りのエネルギーを吸うようになります。そして吸われた人たちも感染していき、さらに周りの人たちに…。こうして会社からヴァンパイアがどんどん増殖していくのです。

 「地の法則」は、陰に転じると「血の法則」になり、エネルギー切れになっている人は、周りから血(エネルギー)を奪うようになります。
エネルギー切れになると、自分がヴァンパイアになってしまっていることには気がつきません。相手からエネルギーを奪っていることすらも自覚できないことがほとんどなのです。
さらに、やっかいなことに本人の吸血活動は、相手のためという善意(・・)でやっていることが多いのです。「あなた(周り)のために…」が口ぐせとなり、問題が起きると「そんなつもりはなかった。私は良かれと思って…」という決めゼリフをよく使います。

自分がエネルギー切れ経営者になっているかの識別のポイントのひとつとして、自分の経営スタイルが「より、さらに、もっと、凄い!」という大量に、大規模に、大発展、前代未聞の…、ということに興味関心が向き、拡大路線を意識し過ぎているときです。

 

■拡大よりも充実を!

 先日、発達障がいの子供たちを支援しているNPO法人代表の女性Eさんの相談を受けました。
Eさん自身も、発達障がいの娘さんを育て、大変ご苦労をされた母親でした。
その時のご経験から「発達障がいの子供たちは、ハンディキャップやマイナスを背負っているのではなく、ユニーク性や独創性を発揮できる才能を秘めている」という強い思いを持たれたそうです。
そこで、発達障がいの子供たちと、ご両親を支援する活動を開始しました。今では、Eさんの思いに共感し、たくさんのボランティアスタッフが集まり、そして支援する子供たちは口コミだけで108名まで増えたていました。
Eさんの相談内容は「困ったり、悩んだりしているご両親、そしてなかなか前に進めない子供たちを支援したいです。この活動を広げるためにどうしたらいいのでしょうか?」というものでした。
そんなEさんには、こんなことをお伝えしました。

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大変素晴らしい、活動をされていますと思います。
これは私自身の経験ですが、今までたくさんの会社、団体を見てきたり、直接その代表やリーダーの相談に乗ってきました。その中で、本当に心苦しい経験や歯がゆい思いもしてきました。

 そのひとつが、初心(原点)からいつの間にか路線が変わってしまうことです。素晴らしい思いで始めたはずなのに、いつ頃からか、集まってきてくれた人を養うことが目的となって、「しょうがないから」と利益追求に走って、結果的に人が離れてしまったり…。うまく軌道に乗って有名になり、さらに広げることに意識が行き過ぎて、現場から心が離れていってしまったり…。そんな光景を見る機会が少なくありませんでした。

彼ら、彼女たちの分岐点はどこだったのかというと…。

「より多くの人たちに、もっと知ってもらって、さらに広げて…」という拡大路線に進んだ瞬間だったと思います。もちろん、それは善なるお気持ちから生まれてくる心だと思うのですが、それで今集まってきてくれている人たち、今信頼して下さっている方々の心が見えなくなってしまうのです。

 これから先ずっと、終わりなく心がけることは、「拡大よりも充実」だと思います。今のこうして善意でお手伝いをしてくださっている仲間たち、信じて集まってきてくれたご両親、そして大きな希望に溢れている子供たちの心こそが、第一に大切なんだと思います。

 活動を拡大するよりも、今を充実させること。目の前の人の気持ちに応えること。お役立ちすること。喜んで頂くこと。それを大切にして、大切にして、大切にしたとき、もしかしたらある変化があるかもしれません。
そんなEさんの一心な活動に心打たれた人が、発達障がいを魅力に変えてイキイキしている子供たちの姿を見てた人たちが、「私も」「私も」とひとり、またひとりと手を挙げて、それぞれの自分たちができる活動をされるかもしれません。

 全部自力で広げようとするよりも、まずは今を充実させることです。その結果として、驚くような他力が加わり広がってしまう…。そのくらいに徹底的に丁寧に最善を尽くして、今を充実させることの方が、本来Eさんがやりたいことでしょうし、心から望んでいることでしょうし、ご両親も子供たちも心から求めていることだと、私は思いますよ。

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今握っているコップに、エネルギーを注いで、注いで、注ぎ続けたある時に、一気に溢れ、周りに広がっていきます。しかし、今にエネルギーを注がずに、外に求めたならば、今握っているコップの中身は、どんどん干上がって、しまいには消えていってしまうのです。

 エネルギー切れになると、ないモノにフォーカスして、得よう、奪おうとしてしまいがちです。
漫画「キン肉マン」の中に登場するラーメンマンの名言に『ないもの以外は全てあるんだ!』というのがありますが、エネルギーに満ちていると、あるモノにフォーカスして、惜しみなく与えることができます。

 大切なことは、与えられた役割に徹することです。
今いる場所を充実させようとするとき、その場は地のエネルギーで満たされていくのです。

 

■人が育たない職場、人が育っていく職場

 先月、ある通販会社の女性経営者Fさんの相談に乗った時のことです。

 その会社は、抜群の商品力と卓越したマーケティングによって高収益をあげ、同業他社からベンチマーク(参考企業、モデル、目標)にされている企業でした。

 そんなFさんが抱えている一番の悩みは、人材教育についてでした。Fさんご本人は、人が育たない最大の原因を自覚していました。それは、そもそもFさんご自身が人を育てることに抵抗があることでした。

 Fさんの会社は、ビジネスモデルと仕組みが確立していて、マニュアル通りに動いていたら回るようになっています。そこで正社員は極限まで少なくして、ほとんどアルバイトに頼っていました。そのアルバイトさんたちは、商品の特性上、全員女性でした。

 Fさんは、今まで何度かアルバイトさんたちを教育して、育てようとして来ました。たくさんの時間も労力も、膨大なエネルギーも費やし、ようやく芽が出始める頃に、いつもあることが起きます。それは女性スタッフたちが、転職、結婚、出産などで、会社を去っていくのです。そして、また募集→採用→教育とゼロからのスタート。Fさんのエネルギーはマイナスからのスタートでした。
それを2、3度繰り返して、Fさんは思います。「もう育てるのはやめよう。エネルギーのムダ。それよりも、どんなアルバイトさんでもできるような仕組みをつくる方にエネルギーを使った方がまし」との結論に至ります。
Fさんの努力と、時代の追い風に乗って、会社は毎年毎年、右肩上がりで成長していきます。そして、昨年ぐらいから、アルバイトで回せる限界が訪れ、マネジメントができるスタッフが必要となっていました。

 Fさんの会社に人が育たない最大の原因が、「自分のエネルギーをムダに使いたくない。エネルギーをかけた人がいなくなるのがイヤだ」と心の中で思っていることです。
エネルギーの『水の法則』と『火の法則』の中に「エネルギーは出し惜しむほど減っていき、エネルギーは与えていくほど増えていく」というものがあります。エネルギーをムダにしたくないと使わないと、エネルギーは漏れていき、最もエネルギーをムダにしてしまうのです。

 人を明るくする人が、明るくなっていくように
人を勇気づける人が、勇気が湧いてくるように
人に幸せを運ぶ人が、幸運になっていくように

与えられた環境で、与え続ける人が、一番与えらます。

 結婚して、出産して、会社を卒業していくのは、おめでたいことです。彼女たちは、会社からエネルギーを奪って去っていくのではなく、「幸せ」というエネルギーを残して、旅立っていくのです。これは『風の法則』の一部ですが、その「幸せエネルギー」は、働く人たちを、会社を、お客さんたちにより幸せを運んできてくれます。

 キレイな花が咲くには、水(栄養)を含んだ大地と太陽の光が必要なように、エネルギーをかけずして、人が育つことはありません。
経営者自らが率先してエネルギーを与え、お互いに与え合う場(雰囲気)をつくることです。経営者がエネルギーを惜しめば、職場はエネルギーを奪い合う場となり、いる人たちをヴァンパイア集団にします。

 まずは、できることから始め、思いつくことをすることです。相手の心のコップがエネルギーで満たされるまで、何も変化しません。むしろあまりよくないことも起きるかもしれません(いわゆる好転反応や瞑眩(めんげん)現象です)。

 大事なことは継続です。エネルギーは奪うモノではなく、与えるモノという空気を作ることです。すると、あるとき一気に流れが変わり、そこにいる人たちもエネルギーで溢れます。そこまで根気よく続けることです。
エネルギーを与え合う空気こそ、人が育つ場をつくります。この空気感のことを「社風」といいます。その場にどんな風が吹いているのか、漂っているのか。それによって、本人がどれくらい成長しようと思うのかを決めます。

 そして、その場に、与え合うエネルギーの空気がなければ、良い人も入って来ません。なぜなら、自立していて、人の心を察することができて、先読みと気配りができる人というのは、エネルギーに溢れている人たちだからです。

これは「水の法則」のひとつですが、下流からは上流は見えませんが、上流からは下流がよく見えます。つまり、エネルギーがある人たちは、エネルギーがない人、ない場所に敏感なのです。その会社が与え合うエネルギーに満ちているかどうかを頭ではなく、肌で感じます。その会社に行かずとも募集チラシやホームページを見ただけでも感じるでしょう。

逆に、与え合うエネルギーが充満している会社には、エネルギー溢れる人たちが集まります。彼(女)たちは、金額的な報酬や労働時間などには、そこまでこだわりません。なぜなら、働くことに喜びを感じ、さらにその場にいるだけで幸せと安心感に包まれているからです。地のエネルギーで満ちた職場には、幸せと安心感に満ちています。

では、そんな職場をするには、どうしたらいいのか?
そのためには、まず自分の中に含まれる「毒気(どくけ)」を抜くことです。

 

■恥を知って、毒気を抜く

 世のため、人のために献身的な気持ちで、ありえないほどの努力をしていても、全く報われない方々もいます。なぜか、与えても与えられないのです。
その理由は、心の中に「毒気(どくけ)」が溜まっているからです。毒気が残っているうちは、やること成すことが裏目に出ます。

毒気とは、「自分のモノ、自分の時間、自分の手柄…」という執着や自意識、そして「もっと欲しい、より認めてほしい、さらに…」という我欲などです。

そもそも心は、損得や勝ち負けや好き嫌いなどにこだわり過ぎて、小さな「現実的なものさし(・・・・)」にハマっているときにエネルギーを失い、周りからエネルギーを奪うようになります。実は、そのとき毒気も一緒に含んでしまいます。
小さな「現実的なものさし(・・・・)」ではかることを終了させない限り、自己満足という毒気に酔ってしいます。「自分の…、自分が…、自分だけ…」という「自己」を追求した先に待っているものは、周りとの「事故」ばかりです。
そうならないためには、ちっぽけな自己を一切挟(はさ)まずに自己(じこ)放下(ほうげ)して、与えられた役割に徹すること、ただひたすら任された仕事を徹底的にやることです。

以前、ある経営者から「うちの社員で、どんなに教育しても、感謝がない人がいるのだけど、人は、どうしたら感謝できるようになるかな?」と相談を受けたことがあります。
なぜ、感謝できないのか? それは、誰かのために一生懸命になった経験が圧倒的に少ないからです。
「恋人や友人や仲間のために…」「少しでもお客さんのお役にたてれば…」という思いで、心を尽くしていたならば、たくさんの失敗をしたり、期待を裏切ってしまったり、信用を失ってしまったりするでしょう。
人は、数々の失敗と挫折の闇を繰り返しながら、人の気持ちを察することができる光を放つ「黄金の心」になっていきます。

自分がする立場になれば、される側の気持ちがさらに深く汲み取れるようになります。すると「してもらってありがたいな」「支えられているな」「お陰さまで」という感謝の念が自然と湧いてくるのです。

自己放下して、与えられた役割を全うするべく、目の前のことに心を尽くしていたら、何もできていない、何もわかっていない恥ずかしい自分を知ります。それを「廉恥(れんち)」といい、廉恥の心がある限り、自然と心のデトックスが起こって溜まった毒気(自己満足、執着、自意識、我欲…)が抜けて行くのです。

四書五経の中で、「立派な人物」について語られているところがあります。
三番目に立派な人物は「一度口に出したことは、必ず実行し、一端やり始めたことは、最後までやり遂げる人」。二番目に立派な人物は「人様のために動く、徳のある人」。そして一番立派な人物とは「恥を知る人」とされています。

エネルギー切れの人は、恥を知らず自分のことばかりになります。
エネルギーがある人は、自分の行動を省みることができます。

つまり「地」とは「恥」であり、それによって「知」を得ることができます。廉恥心があれば、知れば知るほど、知らない自分を知っていきます。

そうして、心から毒気が抜けたとき、エネルギーと必要な情報が川の水が上流から流れ込むように、自然と心の中に入って来ます。そして、思いやりと情熱の炎を燃やしていたならば、情報は知恵に変わり、水が蒸発して水蒸気になるように、爆発的なエネルギーへと昇華します。心から広がったエネルギーと幸せが、仕事を通じて関わる全ての人たちに届けられるようになります。
こうして、エネルギーと幸せに満たされている場と与えている集団に、新たなる出会いが訪れたり、チャンスがめぐってきたりと、幸運の風が吹きこみ、次のステージへと運んでくれるのです。

 

現役歯科医師による歯科医院の為の経営マーケティングクラブ「Doing(ドゥーイング)」
小田真嘉の「魅力経営コラム」2011年3月号より