成長コラム One Point Column

Doing連載魅力経営のヒント

最終回 第24回目:魅力経営をするリーダーの役割(2011年7月号)
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■「あなたが言うからやりたくない」「あなたが言うならやります」

 この『新時代の魅力経営』コラムは、今回で24回目の連載になり、最終回になります。2年間お付き合いいただきまして誠にありがとうございました。次回からは、また新しい形で応援をさせていただきますので、どうぞよろしくお願い致します。

 第1回目から「魅力経営」をテーマに、いろいろな角度からお伝えしてきました。
私自身、今までたくさんの企業を訪問し、また多くの経営者とお会いする中で、状況はバラバラですが極端に分けて、2つのタイプのリーダーに出会ってきました。

「(あなたが言うから、できるなら)やりたくない」と思われるリーダーと
「(あなたが言うなら、喜んで)やります」と慕(した)われるリーダーです。

 どんなに正しいことを言っても、どんなに知識・技術と経験・地位があったとしても、それ以前に周りからどのように思われているのか、その見えない小さな違いが、見える大きな違いを生み出します。

 仕事以前の関係性がボロボロならば、スタッフを育てようといくら正しい指導をしたとしても、相手のモチベーション(やる気)と能力を発揮する機会を奪ってしまうでしょう。
逆に、仕事以前の関係性の土壌が豊かで、スタッフから信用され、憧れられていたならば、多少間違った判断や指導をしたとしても、相手は自らすすんで役割を全うし、工夫改善しながら成長していくでしょう。

 正論だけを言って動かせばよかった時代は、もうとっくに終わりました。
今は、魅力の時代です。もちろん技術も仕組みも大事ですが、仕事以前にリーダー自身が魅力的かどうか、それが経営を大きく左右する時代になりました。

最終回の今回は、過去23回分の内容を凝縮して「魅力経営をするためのリーダーの2つのポイント」をお届けいたします。

その2つとは
「身の内に柱を立てる」「役割に徹する」です。

では、最初から見ていきましょう。

 

■身の内に柱を立て、人様のお役に立つ

業種業態・規模や技術に一切関係なく、全てのリーダーにとって、進歩・発展・向上していくために必須なモノがあります。それが『問い』です。

「どうすれば、もっと良くなるか?」
「この職場に、何が必要なのか?」
「あの人が、さらに幸せになるには?」
「一番、私がすべきことは何か?」
「私たちに求められることは何か?」

 など、自分に問いかけ続けることで、人は成長していき、発展のアイディアがひらめき、人様に貢献ができるよう磨かれていきます。

 問い無き人とは、歩み無き人です。
どれだけ問い続けられるか、どれだけその問いを深められるのか、それが魅力の礎を築いていきます。

では、「問い」はどこから生まれてくるのでしょうか?

 それが、身の内に立てる柱です。それを夢、志、使命、ビジョン、ミッションステートメント、人生目標、自分軸とも言い換えることもできるでしょう。要するに、揺るがない何か、絶対に譲れない貫くモノです。そこから進歩・発展・向上させるための問いが、自然と生まれてくるのです。

 では、どうすれば揺るがない何かを持てるのでしょうか?
どのようにして、身の内に柱を立てることができるのか?

 ある人との出会いがきっかけになったり、ショックな出来事に直面して大切なことに気づいたり、感動的な体験をしたりと、いろいろなパターンがあるでしょう。
しかし、何かが起きるのを待っているのではなく、自ら身の内に柱を立てるには、以下の問いかけを日々することが近道になります。

「そもそも、私の仕事は何か?」

 この答えが、道をひらくカギとなり、魂の感度を高め、気づきを深くし、出会いを紡いでくれます。

 

■自分がやっていることは、こんなにも役に立っているんだ

 ある歯科医Aさんの話です。

 Aさんは開業依頼、一日も休むことなく一心不乱で働いてきました。わずかなスキマの時間があれば、歯科医としての腕を磨くのはもちろん、経営やマーケティングも熱心に勉強していました。
そのかいもあって患者さんも順調に増え、わずか数年で地域一番の人気の歯科医院に成長していきました。

 しかし、やればやるほど、違和感と疑問も同時に大きくなっていったそうです。患者さんのこと、スタッフのこと、家族のこと。自分の将来のこと…。

 「一体、自分は何のために働いているのだろう」
「そもそも、自分の仕事はなんだろう?」

 いつ頃からか、そう思う日々が続いたのでした。

 そんなある日のこと。Aさんにとって大きな転機が訪れます。
訪問ケアーで、あるおばあちゃんの自宅にいったときのことです。

 そのおばあちゃんは、一人暮らしで、体調も悪く、ほとんど寝たきりでした。
部屋に入ってみると、眩(まぶ)しいからと言って、昼間からカーテンを閉め、部屋の中は真っ暗。
おばあちゃんは、ほとんど部屋から出ることなく、ただ寝ているだけなので、部屋の中は散らかり、異臭が漂っていました。歯を見てみると案の定、全く磨いていないのでボロボロ。打つ手は、総入れ歯しかありませんでした。

 Aさんは後日、入れ歯を作って、再びそのおばあちゃんのもとを訪れました。おばあちゃんをベッドから起き上がらせ、つくった入れ歯を口の中にゆっくりと入れた、まさにその瞬間でした。
それまで、眼の焦点が合わずに、ぼーっと虚ろな瞳が、パチっ見開いたのでした。それまで小さかったおばあちゃんが、こんなにも大きかったのかと思うほど、丸まっていた背中もピーンと伸び、カラダ中にエネルギーが一気に流れ始めたようでした。

 それから数日後、再びおばあちゃんを尋ねると…。
Aさんはまったく想像もしない光景を目にします。

 おばあちゃんの部屋に入ると、全てのカーテンが開けられ、気持ちいい日光が差し込んでいました。また床一面に散らかっていたモノも、漂っていた異臭もどこかにキレイに消えていました。
部屋の奥の窓がいっぱいに開けられ、爽やかな風が部屋に入り、その風によって真っ白のレースのカーテンが気持よさそうに動いていました。
その時、カーテンの向こう側の庭に人影が見え、それと同時に明るい声が聞こえました。

 「先生!こっちですよ」

 庭にいたのは、あのおばあちゃんでした。杖をつき、庭を歩いていました。
「先生のお陰様で、すっかり元気になりました。何年ぶりでしょう。こうして外に出たのは…。」

 聞くところによると、入れ歯をするようになってから、みるみる元気になり、今では買い物に外出するまでに。毎日が楽しくなったのだと楽しそうに話してくれたそうです。

 Aさんは、歯科医として、単に歯の治療をするのが仕事なのではなく「歯を元気にすることで、人様を元気にしている」「歯のかみ合わせを整えることで、人生がうまく噛み合うようにお手伝いをしている」のだと、深く気づいたそうです。

 この瞬間の気づきこそが、Aさんの中で揺るがない何かとなり、絶対に譲れないモノとなり、身の内の柱になったのでした。

 Aさんが、あのおばあちゃんと出会ったこと。おばあちゃんが変わったこと。そして、深い気づきを得たのは、それまで「そもそも、自分の仕事は何か?」という問いかけをし続けたことがきっかけになったと思うのです。

 「問い」がなければ、出会いも、変化も、気づきもなかったかもしれません。

問いを立てるから、身の内に柱が立っていく。そして人様のお役に立てるようになるのです。

 

■今の仕事を通じて、何を提供しているのか?

 静岡に、全国のお布団屋さんが注目している寝具店があります。わざわざ車で3時間もかけて通ってくれるお客さんがいたり、「私ここに来るのが、ずっと夢だったのよ」と涙ぐむお客さんがいらっしゃりするぐらいの人気の寝具店「わたしの眠りいなべ」です。
そこのご主人の井鍋安弘さんは、「眠り馬鹿」というあだ名がつくほど、眠りを研究されている方です。
井鍋さんは、布団職人の父親に3歳の時から30年以上、多くの方の眠りに携わり、眠りのプロとして、寝具の最大手の創業440年の西川産業さんへも、眠りや寝具のアドバイスを長年してきました。

そんな井鍋さんが、以前こんなお話しをしてくださいました。
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車にお金をかける人は多いのに、眠りにお金をかける人は本当に少ない。眠りのことを大切にしている人もまた少ないですね。外国の高級車でも、健康じゃないと楽しんでドライブができないのに…。

健康の源は、良い眠りから生まれるものだと僕は思います。眠りには、お金には変えられない、遥かに尊い価値がありますよ。

僕の眠りに対する結論は『豊かな人生は豊かな眠りによって作られ、豊かな眠りは正しい睡眠によって作られる』です。

そもそも人生3分の1は寝ています。例えば30歳の方であれば、今まで10年間は寝て過ごしてきたわけです。寝ている時間はとても長く、貴重な時間ですよね。
その人生の貴重な時間で、いかに正しい睡眠をするのか、私はそのお手伝いをしたいと思っています。

カラダとココロに良い素材でつくった本物の寝具をご提供し、睡眠の正しい知識をお伝えしていくことが私の使命です。私は単に布団を売る「布団屋」ではなく、眠りをお手伝いする「眠り屋」であり続けたい。それが私の仕事だと思っています。

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 単に布団を売るのではなく、良い眠りをお手伝いすることで、幸せな家庭、豊かな人生の土台をつくる応援をしている井鍋安弘さん。

井鍋さんの他にも、今まで過去ご紹介させていただいた中にも、身の内に柱がしっかり立ち、人様のお役に立っている方々がいらっしゃいました。

 単に薬を売るのではなく、「あなたの笑顔が一番の薬」と元気になる心得を伝えている静岡の薬局「くすりのハヤマ」の端山晋一さん。
単に旅行ツアーを売るのではなく、人生を変える旅(きっかけ)をお手伝いしている旅行代理店の「地球探検隊」の中村隊長。
単に大学合格するための指導をするのではなく、良い人生を歩む土台(フォーマット)を作るお手伝いをしている「大学受験ミスターステップアップ」の講師陣。
単にお腹をいっぱいにする食事を提供するのではなく、ココロも魂も満腹になることで悩み事が消えて、自然と幸せに包まれるような食事を提供している「御食事ゆにわ」のちこ店長。

 そもそも今の仕事を通じて、誰に何を提供しているのか?
人様の人生がどうなるための、お手伝いをしているのか?
突き詰めるところ結局、私の仕事は何をすることなのか?

 それを自らに問を立て続けることで、仕事観が深まっていき、身の内に柱が立っていくのです。そして、柱が立てば、自然と自分が進むべき道も見えてくるでしょう。

 

■されど、柱を立てたら、波風も立つ

 人間原理のひとつに「人は散らかしながら生きている」というのがあります。
これは、自然界の摂理「エントロピー増大の法則」でもあります。

整理整頓された部屋は、そのまま自然に任せておくと、次第に散らかっていきます。勝手に整っていくということはありません。
コーヒーにミルクを一滴たらすと、かき混ぜなくてもミルクはどんどん広がっていき、最後には、コーヒーと完全に混ざってしまいます。

 これは人も一緒です。
意識しなければ、次々に起きてくる事象に心が奪われ、すべきではないことをやってしまい、エネルギーが分散して、やり散らかしていきます。どうでもいいことに手を出し、エネルギー切れになったりもします。そうなると、本来の目的や役割を忘れてしまい、散らかし続けるならば、やがて大切な何かを失ったりしてしまうのです。

 だからこそ、譲らない何か、貫きたいモノなどの身の内の柱を立てること。それを毎日何度も思い出す、振り返る、その原点に立ち戻ることで、不要なモノをそぎ落とし、思考をシンプル化し、感情を沈め、片付けることが大切です。そうでなければ、道は続きません。

 迷ったとき、立ち止まったとき、エネルギー不足で息切れしてしまったとき、身の内の柱に戻ることです。意識することです。すると、やるべきことと、やらなくていいことが、自然と見えてきます。後は、やるべきことにエネルギーの80%以上を使い、残りは20%ぐらいのエネルギーで十分。もちろん、それだと多少の支障をきたすことがあるかもしれませんが、それはさほど大きな問題ではありません。

 以前、小学校の先生C子さんの相談にのったときのことです。
C子さんは、教育熱心で、たくさんのことを勉強し、日々の子供たちに情熱を注いでいます。しかし、ここ数年、エネルギー切れが激しく、やればやるほど空回りしたり、問題が起きてしまったりしていました。

 C子さんの原因は、何でもかんでも、全部うまく進めようとしたことでした。
そもそも子供たちを導くというのは、本当に難しいものです。1年間でやれることには限界があります。しかしC子さんは「全部」「全員に」と思うことで、やるべきではないことに大きく振り回され、エネルギーを著しく奪われていました。

 そこでC子さんは、教師としての柱を立てることにしました。
担当した子供たちに1年間で「人の痛みが分かる」ことを伝えることを決意しました。

すると、あまりエネルギーを注ぐべきではない業務や対応が次々に見えてきたそうです。そこにできるかぎりエネルギーをかけずに、子供たちが「人の痛みが分かる」ための教育に関することに集中し、同学年の先生たちや教頭、校長先生に意見を述べたり、保護者にも耳の痛い話をするようになったとのこと。

もちろん、順風満帆に進んでいるのではなく、意見の衝突をすることも増えたり、今まで以上に忙しくなった期間もあるそうです。しかし不思議と、以前よりも遥かに気持ちが楽になり、そして元気に働けているとのこと。

 柱を立てて道を歩む働き方は、器用な生き方ではないかもしれません。むしろ不器用でしょう。非効率で合理的ではないことも多いでしょう。譲れないモノがあるがゆえに、周りとも衝突することもあるでしょう。

それはまるで、ピンボールのように、ぶつかりながら進んでいくようなものです。そうしてぶつかりながら、心の角が取れ、強く、優しく、美しく磨かれていくのです。

しかし、せっかく身の内に立てた柱を手放してしまったり、失ったりしてしまう要因があります。
それはC子さんがそうであったように、周りに過剰な期待をすること、10人中10人の全員から好かれようとすること、全員から認められようとすること、全部を評価されようとすることです。
その瞬間、不必要な苦しみと葛藤と不幸が生まれ、エネルギーを失い、成道が阻まれます。

そもそも、身の内に柱を立てたら、波風もまた立つものです。
無難に、穏便に、何事も無く進むことは不可能です。

しかし柱が立ち、中心が定まった瞬間に、全部の期待に答えようとしなくなります。全員から認められよう、好かれよう、評価されようとは思わなくなります。戸惑わなくなります。後悔しなくなる。何があっても平気になります。

時には、批判する人も現れるかもしれません。離れていく人もいるかもしれません。その人は、今の時点では、一緒にいる人ではなかったということです。

しかし、貫いていたら必ず見てくれる人がいます。少なくとも、お天道様や北極星、大自然の大地、自分自身の奥にある魂が見守ってくれています。「天知る、地知る、我知る」です。

 エネルギーの80%以上を注ぐべきところに注げていたならば、元気と魅力が溢れ、ベストなタイミングで必要な出会いが訪れるでしょう。

 

■役割という乗り物に乗って運ばれる

「魅力経営をするためのリーダーの2つのポイント」の最初は「身の内に柱を立てる」でした。次が「役割に徹する」ということです。

 人はたくさんの役割を持って生きています。役割がない人はいません。
リーダーとして、職業人として、社会人として、父親(母親)として、男(女)として、人として…。

役割とは、天から与えられるものであり、人から求められるものです。それは、まるで人生という航海をする船のような乗り物とも言えます。人は役割に乗ることで、今までとは違う次の世界(ステージ)へと運ばれるのです。

実は、リーダーが与えられた役割を全うしようとしたときに、最初に乗り越えなければならない、通過儀式や洗礼のようなものがあります。

 先日、ある会社で相談に乗ったときのことです。4月から人事異動で、営業部本部から大抜擢されて、副社長に就任したBさんがいらっしゃいました。

 出世をしたBさんには、実はある悩みがありました。
今までのBさんは、部下ともお客さんとも友達のように深く仲良くなるスタンスで、部下からは信頼され、お客さんからは人気がありました。
しかし、そんなBさんですが、副社長に就任してからというもの絶不調に陥りました。それは、今までと同じようなスタンスが通用しなくなったからです。今までとは違って副社長としての自分を求められることに違和感があったのでした。
「副社長として、ちゃんと立派にやって欲しい」と周りからの期待も重なり、Bさんの不調にさらに拍車をかけていました。

 Bさんは言っていました。
「やらなければいけないことは分かっているんですが、周りから求められている自分と、本来の自分は違うんです。どうも違和感と不安があって…」

当然、新しいポジションに移動したり、新しい仕事(プロジェクト)に関われば、新しい役割が生まれます。
新しい役割が生まれれば、未知への不安もまた同時に生まれます。
それはある意味で、炎の輪をくぐるかのような通過儀式・洗礼です。覚悟を決めて不安をくぐり抜けた先に、まだ見ぬ新しい世界(ステージ)が一気にひろがっているのです。

未来への希望と不安はセットであり、その不安にも対処できる不安と、ただただ受け入れて、感じ切るしかない不安との2つがあります。

いずれにせよ、その不安を敵ではなく、味方にすることです。
対処できる不安に関しては、綿密なプランをつくり、用意周到な準備をするエネルギーに使うことです。
ただ受け入るしかない不安に関しては、自分の心と向きあうことです。これに関しては、覚悟して不安を受け切るしかありません。
その不安を忘れようと、もしくは逃げようと走ってしまうと、自分が抱えている問題(心の弱さ)を周りに投影して攻撃してしまうこともよくあります。

不安を感じること自体は、問題ではありません。問題なのは不安に負けて、身の内に立てた柱をなくすことです。

与えられた役割を徹しようとすれば、本意ではないこともあるかもしれません。好き好んでやりたくないことも起きるでしょう。しかし、そのときこそ役割を通じて、自分を育てていくチャンスです。

「役割を通じて、自分を育てること」を意識すれば、今までの強みを伸ばすこともできるでしょう。新たなる強みも発見できるでしょう。また今まで感じていた弱みもある程度克服できるかもしれません。
そうすることで、役割の船に乗って自分が運ばれていくだけではなく、大切な人たちも、今まで以上に運ぶこともできるでしょう。

役割を通じて、どこまで自分を育てることができるか、それがリーダーシップの質、魅力の光そのものに直結するのです。

ここで大切なことは、素の自分に戻らないこと。
ある意味、役割の自分を演じて、役割を上手に使いこなすことです。

こうして、役割に徹していたら、自然と次のチャンスがめぐってきます。
もし、次のチャンスが来ないのであれば、今の役割をまだ全うしていないか、もしくは、天から与えられた役割を通じて、乗り越えるべきテーマがまだ残っているからのどちらかでしょう。

役割を徹する第一歩は、「まぁいっか」「よし!やるか」と開き直ることです。
開き直って与えられた役割によって練られていたら、いずれ次の扉が開かれる時が訪れるでしょう。

 

■分離感が、役割を果たすことを邪魔する

 リーダーとして役割を果たそうとすると、あるジレンマが生まれます。
それは、メイン業務以外のことをするのが多くなるということです。

 例えば、思わぬクレームやウワサ話への対応、家庭や職場の人間関係、金銭問題や恋愛問題、プライベートなトラブル、様々な人生相談・・・など通常業務以外の泥臭い雑務が増えます。

職場にプライベートをもちこまないというポリシーがある人、公私混同をしないように厳しく言う人もいます。しかし、特に柱を立てて組織を運営していくリーダーにとって、業務以外の業務に時間を費やすことが多くなることは、避けられないことです。

 これはどんな組織でも同じです。
問題なのは、問題が起きることではなく、問題が起きたときに、どう思い、どう向き合うのかということの方を問題にすべきです。

起きる問題ばかり見ていたら、問題処理ばかりしている組織になります。
未来をひらく機会を見たら、長所(強み)を活かし合う組織になります。

 起きる問題に引きずられ、与えられた役割を果たせなくなってしまう要因となるのが「めんどくさい」という感情です。

確かに面倒なことに対応しなければならない場面は、何度も何度もあるでしょう。そもそもリーダーとは、人の面倒を見る人のことです。面倒なことが起きて当たり前です。
ポイントは「めんどくさい」と感情を引きずったまま、誰かを責めたり、何かにあたったり、言い訳や自己正当化しないことです。そうでないと、本来の役割を全うすることから離れていってしまいます。

そもそもなぜ、「めんどくさい」と思ってしまうのでしょうか?

それは、自分事と他人事と分離しているからです。

ここでイメージしてみましょう。家の洗面所の排水口を見たとします。
例えば、そこは自分の髪の毛が溜まっていたとします。それを見て多くの人は、不快に思うでしょう。これは当然の反応でしょう。

しかしです。その髪の毛が生前、自分の頭に生えていたときは、不快に思うことは一度もなかったはずです。

ではなぜ、不快に思うのでしょうか?

それは、自分から「分離」したからです。
自分と一体化していたら、ネガティブな反応はしません。

職場や家庭で問題が起きて、面倒だと感じるとき、イライラするとき、不愉快になるとき。その根源的な衝動的感情は「分離感」から生まれます。

これは、組織の中でも同じです。
同僚や仲間や大切な人と心が一緒なら、起きる問題はむしろ自分の出番となります。たとえ「めんどうだ」という思いがわきあがったとしても、一瞬で消え去り、引きずることも、また後に影響することもないでしょう。

問題が起きることが問題なのではなく、心がひとつになっていないことの中に、リーダーとしての乗り越える本当の課題(テーマ)があるのです。

「めんどくさい」という感情に負けていると、言い訳や先延ばしや責任転嫁をしてしまいがちになるからです。
すると、どうしてもスタッフのできないことや短所(弱み)に気が行ってしまいます。それ以上に、できることや長所(強み)に目を向けることです。これは意識して見ようとしないと見えてきません。

そうすると、勃発するやっかいな問題に心が奪われるのではなく、明日につながる今日の最大のチャンスに、心のピントが合ってくるでしょう。

長所(強み)は、仲間の短所(弱み)を埋めるためにあります。
短所(弱み)は、仲間の長所(強み)を活かすためにあります。

 それはまるで、パズルのピースのように、短所(弱み)という凹と、長所(強み)という凸が合わさって、ひとつの絵を描いていきます。その境界線をつなぎ、埋めていく接着剤の役割を果たすのがリーダーです。
こうして各人の居場所をつくってあげ、お互いの長所(強み)を活かし合える組織を運営していくことが、魅力経営だと思うのです。

 この『新時代の魅力経営』コラムは、これで最終回になります。
激変の時代ほど、変わらない本質が重要になってきます。この2年間、ご縁を頂いた方々を通じて教えていただいた本質を、精一杯お伝えさせていただきました。こうして、あなた様がご購読いただいたお陰さまで、私もたくさんのことを学ぶことができ、また貴重な体験をさせていただきました。この場を借りて心から御礼申し上げます。

2年間、お付き合いいただきまして誠にありがとうございました。今後は新しい形で応援をさせていただきますので、どうぞよろしくお願い致します。
あなたがますます輝き放ち、その魅力の光によって、触れるすべての人を包みこみ、その光の波が世界の果てまで広がることを、心から祈っております。

小田真嘉

現役歯科医師による歯科医院の為の経営マーケティングクラブ「Doing(ドゥーイング)」
小田真嘉の「魅力経営コラム」2011年7月号より