成長コラム One Point Column

Doing連載魅力経営のヒント
第1回 繁栄の条件 (2014年7月号)
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■「なぜ、人が来ないんだろう…。どうして、人が育たないんだろう?」

昨日まで順調だった会社が、一夜にして崩壊。
昨日まで活躍していた人が、一夜にして一文無しに。

大激変期と言われる中でも、過去最高益の会社もあれば、予約が取れないほど大人気のお店があったり、仕事の依頼が途切れない人もいます。一体、何が違うのでしょうか?

以前、ある小さな病院の先生の相談に乗りました。「なぜか、ここ最近、患者さんが来ないんです…」という質問からはじまり、「最近、クレームが多くなって…」「ドクターも、スタッフも、ぜんぜん育ってくれません」「採用しても全然ダメで、いい人来ないんですよ」と、経営、増患、対応、採用、育成…と質問の連続でした。院長先生は熱心な方で、いろいろと取り組みをしていたのですが、なぜか成果につながっていませんでした。患者さんは減っていく一方。挙句の果てにスタッフが次々に辞め、まったく定着しない。

精一杯の努力をしているはずなのに、なぜうまくいっていないのか?
それには、ある決定的なことが欠けていたからでした。

 

■1000社以上の経営者と、1万人以上の方々との対話から気づいたこと

自己紹介が遅れました。今回から連載をさせていただきます、小田真嘉と申します。

私は、経営コンサルタントとして活動しています。病院、歯科医院、調剤薬局、医療系シンクタンク、そして個人事業主から、世界展開しているグローバル企業、400年以上続く有名老舗企業、第一線で活躍しているプロフェッショナル、ベストセラー作家、講師やコンサルタントの先生まで、幅広く相談に乗っています。

おかげさまで、全国からご依頼やご要望をいただいていますが、決して経営や経済のことを基礎から学んだわけではありません。

成功している先輩経営者たちを訪ね、生々しい体験と実学を直接教えてもらったこと。1000社以上の経営者。新入社員、マネージャー、経営幹部、そして個人事業主など1万人以上の方々との、深い対話の中から見えてきた、仕事の原理原則、経営の要諦、繁栄の法則をベースにコンサルティングをしています。

これからの6回の連載では、そのエッセンスを凝縮した本質のみをお伝えしていきます。ウツの人がユンケルを飲んでも元気にならないように、テクニックだけで経営していたら、根本的な改善も永続的な繁栄もしません。本質から外れていたらどんなことをやっても、かわいい動物たちや飼い主さんのためにも、スタッフのためにも、先生ご自身のためにも、誰のためにもなりません。大事なことは、時間や手間がかかっても、たとえ目先の利益が多少減ったとしても、本質をがっちりつかみ、自然の法則や仕事の原理原則にそって経営や人材育成をすることです。

 

■安定な時代から不安定は時代へ、流れは変わった。

冒頭にご紹介した、頑張っても成果につながらないクリニックには、一体何が欠けていたのでしょうか? それは、2つの「繁栄の条件」が欠けていました。
その2つの条件について語る前に、その前提となる時代の流れについてお伝えします。

そもそも、時代の流れは、「安定している時期」と「不安定な時期」を繰り返しています。

国ができて繁栄の時期を迎えると、やがてそれがまた根底から覆って下剋上の乱世のような時代が来ます。それが安定すると、再び不安定。それが交互に繰り返されます。

大和朝廷は不安定、奈良・平安は安定、戦国時代は不安定、江戸時代は安定、明治維新で不安定、明治から昭和までは安定、太平洋戦争で不安定、高度経済成長とバブルで安定、バブル崩壊以降は不安定。そして今は、まさに不安定の時期の真っ最中です。
※本来は、もっと細かいのですが、ここでは簡略化して紹介しています。

時代は「安定」と「不安定」を繰り返す

 

安定な時代に、最も力を発揮する効率的な形が、「ピラミッド型組織」です。上からの命令は絶対服従。高度経済成長やバブルまでを思い出してみればカンタンに分かることですが、医師、教師、弁護士、社長、上司には権威と威厳がありました。さらに家庭でも両親の言うことは絶対です。そして、販売者(企業やお店)から言われるままに、消費者は商品を購入し、作れば売れた時代でした。これらは全て「縦の関係」で、上から下へと水が自然と流れるように、会社も家庭も動いていました。

「縦の関係」では、治療も経営もやり易かったはず。なぜなら、飼い主さんもスタッフも先生の言うことを、素直に聞いてくれたからです。しかし、そんな時代は、もう終わってしまったのです・・・。

 

■患者さんとコミュニケーションがとれないホントの理由

以前、ある歯科医院のドクターAさんの相談にのったときのことです。

Aさんには、悩みがありました。それは患者さんとのコミュニケーションがとれないということ。しかし、私にはコミュニケーションが苦手なようには、全く感じませんでした。そこで、最近の患者さんとの間であった出来事を聞きました。すると…

先日、親知らずを抜く治療を行った女性の患者さんに対して、Aさんは名刺を渡して「今日は、お風呂には入らないでくださいね。出血する可能性がありますので。その他、もし何か痛みなどありましたら、気軽にこの名刺に書いてある番号におかけください。私の携帯なので」と伝えました。

すると、その夜。患者さんから、Aさんの元に電話がかかってきます。
「ちょっと!なんて、ひどい治療してくれたの!血が止まらないじゃない!!!」
Aさんは、誠実に対応し、状況を聞きますが、少しおかしなことに気づきます。
Aさん「あ、あの…、大変失礼ですが、お風呂には入りませんでしたか?」
患者さん「お風呂? 入りましたけど。それが、何か?」
Aさん「え・・・!? 治療後に、お風呂は避けていただくように、お伝えしたと思うのですが…」
患者さん「聞きましたよ。聞きましたけど、インターネットでいろいろ見てみたら、大丈夫って書いてあったわよ」
Aさん「・・・」

Aさんは、患者さんとコミュニケーションがとれないと悩んでいました。しかし、この患者さんに伝わらなかったのは、コミュニケーションや伝達力の問題ではありません。別の最大の原因があります。さて、それは何でしょうか?

結論から言います。それは「信頼されていなかった」ことです。患者さんは、ドクターのAさんの話しよりも、インターネットの情報を信頼した。それだけです。

少し前の時代は、正しいことを伝えるだけで十分でした。
なぜなら、以前は「縦の関係」ですから、先生の言うことは絶対です。上から下へと水が自然と流れるよう、信頼されていなくても、表現力がなくても、患者さんは受け取ってくれます。

しかし、今の時代は「横の関係」になりました。先生も患者さんも対等な立場。正しいことを言っても、それが正しく伝わるとは限らなくなったのです。特にこれは、人に教えたり、指導したり、治療したりする「先生業」には、とても大きな変化のひとつです。

 

■不安定な今の時代の繁栄の条件とは?

「縦の関係」から「横の関係」へとシフトしたことで、権威や地位の効果は薄くなり、少しでも不満や不安があると、人々はすぐに離れていきます。もしくは直接攻撃(訴える)か、間接攻撃(悪い噂を流す)をするのです。

しかし、悪いことだけではありません。逆に、信頼されている先生や動物病院には、飼い主さんもスタッフもチャンスも集まります。それが波のように、どんどん広がっていき、飼い主さんが協力してくれたり、応援してくれることもあるでしょう。

冒頭のクリニックの先生がなかなか成果につながっていなかったのは、患者さん、スタッフから、信頼も共感もされていなかったことが最大の原因でした。

これからの時代、繁栄していくためには「信頼」と「共感」の2つが条件になります。

いい治療をするのは当然のことですが、それ加えて「いかに信頼・共感されるか」が、ますます大きなカギを握るようになります。「できる先生から、いい先生へ」「できる動物病院から、いい動物病院へ」というのが、大きなテーマとなるでしょう。

次回からは、飼い主さんとスタッフと信頼をしっかり築き、共感が広がっていく秘密と秘訣をお伝えしていきます。


上薬研究所「地域で愛される動物病院作りのお手伝いをするコミュニティーレター」
(全国の動物病院3300部発行)
小田真嘉の「信頼と共感の経営」連載コラム 2014年7月号より