成長コラム One Point Column

Doing連載魅力経営のヒント
第2回 なぜ、あの人には伝わらないのか? (2014年8月号)
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■伝えたいことが伝わらない時代

前回、時代の変化として「縦の関係」から「横の関係」へとシフトしたとお伝えしました。横の関係になったことで、業種や組織の規模に関係なく、多発している問題があります。

離職率の増加、スタッフの反発(離反)、顧客離れの加速、クレームの増加、不当な返品(返金)、組織の崩壊…。
状況は違えども、そのような問題が起きる原因には、ある共通があります。それは…。

「伝えるべきことが、ちゃんと伝わっていないことです」

逆に言えば、伝えるべきことが、ちゃんと伝わったなら
優秀な人材を採用できる。お互いに協力しあう組織(チーム)ができる。ファンや応援者が増える。来院頻度が上がる。勧める治療や商品(サービス)を快諾してくれる。口コミ・紹介が増える。飼い主さんから感謝される…。など、たくさんの恩恵を授かります。

良い治療さえしていればいい時代は、終わりました。
もちろん、正しく診断し、ちゃんと治療することは大前提です。
良い治療をしているだけでは、外的環境がよほど変化しない限り(例えば、近くに大型のマンションが立つ、メディアに紹介されるなど)、経営状況は先細りになっていくということです。

今は、伝えたいことが伝わらない時代になってしまいました。
なぜなら、情報が急増して、環境が変化したからです。

 

■超・情報化社会の到来

人類は、これまで大変革を三回経験し、進歩発展してきました。
その3回とは、農業革命、産業革命、そして情報革命です。

農業革命によって、狩猟採集移動社会から農耕定住社会に移行し、食べ物に困らなくなりました。
産業革命によって、農耕中心から工業社会に移行し、モノを大量生産できるようになりました。
情報革命によって、企業中心社会から個人中心社会に移行し、誰でも情報を①収集(検索)②編集(判断) ③発信(利用)できるようになりました。
さらに今は、「クラウド、モバイル、ビッグデータ、ソーシャル」の技術革新によって、超・情報化社会へと進化していると言われています。

グーグルの会長・エリック・シュミットによると
「人類の夜明けから2003年までに生み出された情報量は、今ならわずか2日しかかからずに生み出されている」とのこと。
今の情報量は、世界中の砂浜の砂の数を、ゆうに超えるとも言われています。
その一方、私たち人間の情報処理能力が、何億倍も飛躍するということはありません。(一人で、世界中の砂浜の砂を数えきるのが不可能なように…)

ということは…、ほとんどの情報が無視(スルー)されているわけです。
実際、総務省の「情報流通インデックス」という調査によると、99.996%の情報が無視されていると発表されています。
つまり、選ばれる情報は、たったの0.004%です。

ブログの記事が10万個あったら、ちゃんと読まれるのはたった4個。
飼い主さんに10万回言っても、ちゃんと聞いて覚えてもらえるのは4回。

誰もが、大量の情報の洪水に襲われる忙しい毎日の中で、自分が発信する情報、伝えることが相手に届くのは、どんどん困難になっていきます。
超・情報化社会とは、情報が届かない時代、伝わりにくい時代、情報の価値が低下する時代ということなのです。
それは、情報提供の心構え、情報伝達のポイント、情報共有のコツが変わるということです。それを踏まえて、伝えるべきことを、ちゃんと伝わるためのポイントをお伝えします。

 

■「私は、ちゃんと言っているのに」と主張している限り…

ここで、重要な大前提、グランドセオリー、原理原則をお伝えします。

〝(自分が)何を言ったかよりも、(相手に)何が伝わったのかが真実〟

以下のような、ご経験はありませんでしょうか?
先生「いや、私はちゃんと言いましたよ」→ スタッフ「いや、私は聞いていません」
先生「前回、○○とお伝えしましたが」→ 飼い主「知りません、初めて聞きました」
先生「Aを使うと言ったはずですが」→ 飼い主「先生は、Bと言っていましたよ」

私も、たくさんの企業と関わり、現場で多くの方と膝を突き合わせる中で、同じような場面に数えきれないほど出会ってきました。お互いに言い分はありますが、私の結論はコレです。

相手が知らないなら、伝えたことにはなりません。何も言ってないのと一緒です。
相手に正しく伝わらなかったのではなく、(変換されて)誤情報が正しく伝わっているのです。

そのようなときに、自分の正しさをいくら主張しても、何も解決しません。むしろ、関係と状況が悪化していくだけです。

伝わった情報。相手の結果が全てです。

自分が何を言ったかよりも、相手に何が伝わったのかが真実です。

その結果を踏まえて、自分がこれから、どう対処していくかしかありません。

 

■あの人に伝わらない6つの理由

一生懸命伝えても、相手に伝わらないのは、次の6つの原因のいずれかにあります。

 

1.回数が足りない

「ちゃんと言ったのに」という方に、「何回ぐらい言ったのですか?」と質問すると、ほとんどの方は、1~2回。3回以上という方はごく少数です。
1回言ったから終わり(責任は果たした。もしくは、やることはやった)、と思って安心している限り、相手には伝わっていません。しかも、大切なことほど、1回だけでは伝わらないものです。
繰り返し、何度も、根気よく、その相手の状況に応じて、表現を変えて、(人や内容によっては、顔を合わせるたびに)伝え続けることが必要です。

 

2.思いが足りない

そもそも「伝えたい」「教えてあげたい」「知っておいて欲しい」「何とかしてあげたい」という思いの強さ、情熱、使命感、責任感、真剣さ、真摯さ、誠実さ…が不足していたら、どんなに繰り返し伝えても、心までは届きません。
心底、相手のことを思う。心底、伝えてあげたいと思うことです。

 

3.表現が足りない

思いを込めて、何度も伝えても、相手に受け取りやすい表現をしなければ、心の奥までは届きません。例え話を持ち出したり、具体的な事例(良い事例、悪い事例)を紹介すること。相手が受け取りやすい、わかりやすい表現を磨くことも大事です。表現力を磨くとは、相手が親しみやすい言葉や、好みそうな語彙(ボキャブラリー)を増やす努力をすることでもあります。特に10代、20代のコミュニケーション・スタンスは、スマートフォンやLINEなどのソーシャルメディアによって大きく変わってきているので、彼(女)らに直接、最近流行しているものを聞いたり、そこで実際に、コミュニケーションに触れることも必要かもしれません。

 

4.相手が求めていない

以上の1~3の要素を満たしたとしても、相手が心から求めていなければ、どんなに伝えても、なかなか響かないものです。お腹がいっぱいの人に無理矢理、ごはんを食べさせるようなもの。
しかし、相手が求めていない理由のひとつは、もしかすると、ただ単に必要性や重要性を知らないだけかもしれません。
自分が伝えようとしていることは、なぜ必要なのか? なぜ大事なのか?
そもそも、どうして伝えようとしているのか? その理由や意図は何か?
それらを、丁寧にちゃんと伝えることが大事です。

 

5.タイミングではない

そうは言っても、人には、誰しもタイミングというものがあります。必要とするタイミング。変わるタイミング。心から知りたいと思うタイミング。そのタイミングが来るまで、じっと信じて待つことも大事。もちろん、それまで何もしないのではなく、できることをしたり、繰り返して伝え続けることです。

 

6.そもそも信頼されていない

前回の1回目でもお伝えした通りです。1~3の条件がどんなにそろっても、そもそも相手から信頼されていなければ、何も伝わりません。むしろ伝えようと努力するほど、嫌がられ、心がより離れ、信頼度がますます下がってしまう、ということもあります。それは、伝える以前の問題です。
伝える以前のすべての言動、振る舞い、関わり方の蓄積(相手の印象)が、伝えようと思ったときに伝わっているのです。
昔からどの世界でも、「何を言うかよりも、誰が言うかが大事」と、よく言われます。
それは、伝える前に、何が伝わるのか、99%決まっているということなのです。
ということは…。
最も大事なことは、伝わるその時まで(もちろん、伝わった後も)、普段から信頼を積み重ねていくこと。信頼されるように、自分を高めていくことです。

 

■共感と共鳴される自分になる

最後の6番目の「信頼される」ことが、6つの中で一番大事なのですが、その中には、共感されることも含まれます。
共感が生まれるには、自分の生い立ちや、好みや趣味などの自己開示することです。

また、共感が深まっていくと、共鳴が生まれます。
しかし、自己開示だけでは、共感に至りません。
共鳴が生まれるには、自分の思いを恥ずかしがらず、カッコつけず、自分の言葉で語ることです。
そのためには語るべき熱い思いを持つこと。
自分の中の良心を下へ下へと、掘っていけば、誰でも熱い思いの源泉にぶつかります。
すると、熱い思いが、湯水のごとく、次々に溢れ出てきます。

下に掘っていくとは、効果的な質問を自分に問いかけ続けることです。
そこで最後に、共感と共鳴される思いを掘り当てる8つの問いかけを紹介します。

 

(1)なぜ、自分が今の仕事をやりはじめたのか、そのきっかけ。
(2)どうして、仕事を続けられているのか? 仕事の原動力や、働く喜び。
(3)今、一番大事にしていることは、何か? 自分の信念(ポリシー)、哲学や美学。
(4)今、世の中で起きている問題で嘆いていることや心が痛むこと。問題意識。
(5)自分が思う理想の世の中。それは、何がある社会で、何がない社会か?
(6)そのためには、何が必要か? わずかでも自分ができることは、何か?
(7)たとえ、どんなにお金をもらえても、絶対にやりたくないことは、何か?
(8)どんな人(スタッフ、飼い主さん、動物たち)が増えてくれたら嬉しいか?

 

ぜひ、自分の良心に問いかけ続けてみてください。心の奥から熱い何かが湧き出てきたならば、それはきっと伝わる共感・共鳴・信頼となるはずです。

超・情報化社会とは、情報の価値が低くなる社会ですが、ここで言う情報とは、単なる記号や文字の冷たいインフォメーションのことです。
そもそも、情報とは、〝情〟に〝報いる〟と書きます。

超・情報化社会を逆に言えば、あなたの愛情、純情、親情、温情、至情…が込められた血の通った情報は価値が高く、相手にきちんと伝わり、心に届く人情社会でもあるのです。


上薬研究所「地域で愛される動物病院作りのお手伝いをするコミュニティーレター」
(全国の動物病院3300部発行)
小田真嘉の「信頼と共感の経営」連載コラム 2014年8月号より