成長コラム One Point Column

Doing連載魅力経営のヒント
第4回 成長する組織(チーム)の原則(育成編) (2014年10月号)
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■なぜ、あの人は成長しないのか?

前回から「成長する組織をつくる3つの原理原則」をお伝えしています。

その3つとは
1.採用の原則(スタッフ募集、面接、雇用)
2.育成の原則(スタッフ教育、チーム作り)
3.繁栄の原則(ファン作り、しくみ作り)

今回は、2つ目の「育成の原則」です。

どんなに、スタッフ教育やチーム作りに熱心に取り組んでも、なかなか成長しない。またある日、突然やめてしまう。そんな残念な組織は、多いものです。
もちろん、そうなってしまう原因は、いくつもあります。
今回は、その中でも、「育成の原則」の視点からお伝えします。

 

■モチベーションとテンションの違い

もし、「スタッフが成長しない」「いい組織(チーム)とは言えない」と、少しでも思うならば、その原因は、モチベーションとテンションを勘違いしていることにあるかもしれません。「モチベーション」と「テンション」が違うのは、ご存知でしょうか?

どんなに能力があっても、モチベーションが低かったら、いい仕事はできません。さらに、どんなに優秀であっても、問題やトラブルを起こしたりするものです。
逆に、多少の知識・スキル不足であっても、モチベーションが高ければ、いい仕事ができるように成長していきます。
そのため、近年「モチベーション」の重要性が高まってきています。私自身も、多くの企業から
「スタッフのやる気がないから、モチベーションをあげたい」
「モチベーションを下げずに、もっと頑張って働いて欲しい」
という要望も多くいただきます。

しかし、経営陣と現場のスタッフの方々のお話を直接聞いてみると、大きなズレと溝が生じていることが多々あります。

最大の原因は、「モチベーション」を正しくとらえていないこと。
多くの方が、「モチベーション」を「テンション」と勘違いしているのです。

そもそも、テンションとは、英語では「(精神的・感情的な)緊張や不安」の意味ですが、 私たちが普段使っている「テンションが上がってきた」というような「やる気」という意味での「テンション」は和製英語です。
本来、テンションとは、「気分(感情)の波」です。テンションを上げて、何かを取り組むということは、「(高揚した)気分」の勢いで取りかかるということです。

テンションを上げる方法はいくつもありますが、一言でいえば「非日常を体験する」ことです。
一番カンタンなのは、体育会系の運動部のように、円陣組んで大きい声を出すこと。
「みんな~!がんばろ~!えい、えい、お~!」「おれたちはぁ、できる!ぜったい!おー!」

 

その他にも…、感動的なイベントに参加する。テンポの速い曲を大音量で聞いたり、リズムに乗って踊る。大きな成果をあげて、周りからの大きな称賛を得る。
これらなどをすることによって、ハイ・テンションになり、その勢いで仕事に向かうことができます。

しかし、ここに大きな落とし穴があります。テンションは波なので、上がれば、必ずその後には下がります。上がったまま維持することはできません。
人によって時間は違いますが、早くて次の日、遅くても3日後には、一気にあげたテンションの後遺症があらわれます。
「なぜか、やる気が起きないなぁ。何もする気になれない」
「何かよくわからないけど、心が落ち着かない」
「昨日の自分はどこにいった?昨日はなんだったのか」
など心に異変が表れます。

すると多くの場合、再びテンションを上げようとします。気分を高揚させ、ハイ・テンションの状態に戻ることをします。
例えば、3日前にセミナーや勉強会に参加して、ハイ・テンションになっていたのなら、その時のノートを見返して、その時の興奮を思い出したりとかします。
それで確かに、テンションは一時的に戻りますが、すぐにテンションは下がります。しかも、以前よりも増して深く落ち込みます。そして再び、テンションを上げようと…。

こうしてテンションのアップダウンを繰り返していくと
「自分はダメだ。自分にはムリだ」
「才能もない。根性もない」
「やっぱり今回も続かなかった…。向いてない」
など、強い自己否定に至る場合も少なくありません。

こうなると、テンションの高い職場の上司や仲間には相談もできなくなり、本人のとる行動は、急に音信不通になったり、病気や家庭の事情を理由にメールや手紙だけで退社したりします。突然の行動に周りは驚くのです。「あんなに前向きで、頑張っていたのに」と…。

 

■モチベーションの正体

一方、モチベーションとは、「動機(やる理由、意義、意味)の腑に落ちる度合い」のことです。
もし、今の仕事をしている動機が、「お金のために」「生活のためにしかたなく…」「楽な仕事だから」というものだったら、モチベーションは低いままです。モチベーションをあげるには…

「何で、今の仕事を始めたのか」
「そもそも、何のためにやっているのか?誰のためになることなのか?」
「この仕事をすることで、どんな社会的意義があるのか?」
「私がこの仕事をしている理由は何か?」
「多くの会社がある中で、私はどうしてこの会社で働いているのか?」
「今の仕事は私の人生にとってどんな意味があるのか」
「この仕事を通じて、誰をどのように幸せにしているのか?」

それらの答えを、自分なりに持っていることです。
しかも、単に頭で理解しているのではなく、腹にどれだけ落ちているか、骨身に浸み渡っているか、その度合いこそがモチベーションであり、行動の源泉(エネルギー)となるのです。

時代は「安定」と「不安定」を繰り返す

 

モチベーションは上がっても、下がることはほとんどありません。
ただし、モチベーションである「動機」を忘れてしまうことがあります。
その時は、思い出せばいいだけです。すると、すぐに元に戻ることができます。
本当のモチベーションは下がるのではなく、忘れてしまうもの。
人は、手前や目の前にある作業に没頭してしまう(ロックオンしてしまう)と、「動機」を忘れがちになります(ロックアウトしてしまう)。
モチベーションが高いと周りから思われている人は、情熱や才能や行動力があるのではなく、忘れない努力や思い出す工夫をしているのです。

モチベーションを上げる方法もいくつもありますが、大事なのは「原点回帰」と「目的の明確化」の2つです。

原点回帰とは、「そもそも何で今の仕事始めたのか?」「今まで印象に残っている嬉しかった仕事は?」その原点(初心)に戻ること(思い出すこと)です。
目的の明確化とは、「何のために働くのか?」それを自分に問い続けることです。

 

■前に進もうと思うときほど、原点に戻る

私が、お手伝いしているウエディングのフラワーコーディネートをしている会社Aがあります。
ここ数年とくに、結婚式単価は上昇傾向し、ブライダル業界は好調と言われていますが、大手が次々に参入し、競争は激化。単価もどんどん下がっていきます。
それにも関わらずA社には、結婚式場や大手ブライダル企業から、提携のオファーが来ていました。
A社は、新郎新婦の思いを汲み取って、花だけでなく空間全体をプロデュースし、過去3000組すべてオリジナルのフラワーコーディネートをしていました。同じデザインはひとつもありません。それが大好評だったのです。
提携は、金額的メリットが非常に良い条件でした。しかし、実際に提携して一緒に動きはじめてみると、雲行きがあやしくなっていきます。今まで無いようなトラブルが次々に起き始めるのです。

悩む女性経営者に、私は「今まで関わってきた新郎新婦さんの中で、印象に残っているのは、どんな方でしたか?」と、お聞ききしました。
すると、彼女は、なかなか思い出せずに、考えこんでしまいました。

その日の夜のこと。彼女のもとに、突然知らない番号から電話がかかってきます。
電話を出ると、それは会社設立したばかりの10年前に、結婚式をプロデュースした女性からでした。
偶然に、ホームページを発見し、あの結婚式が忘れず、感謝の気持ちを伝えたくて、連絡してきたとのこと。
それから数日後、彼女から会社宛に、1冊の小さなアルバムが届きました。
見てみると、当時の結婚式の写真と、そこに手描きのコメントがたくさんありました。

当日の写真を、ケイタイの待ち受け画面にしていること。
子どもたちも、結婚式の写真を楽しそうにみていること。
さらに、そのときに飾っていた花をドライフラワーにして、自宅に飾っている写真。
そして、ブーケに使っていたアイビーを、自宅の庭に植えて育てている写真。

 

時代は「安定」と「不安定」を繰り返す

 

そのアルバムを見た社長さんとスタッフたちは
「当時は、最高の結婚式をするために、新郎新婦のこと、そして参列者のみなさんのことばかり考えて、ホント必死だったなぁ…」
「結婚式は、その後も、ご夫婦の中で、ずっと幸せの発生装置として、生き続けているんだな」
「結婚式をプロデュース、フラワーコーディネートって、未来の幸せをつくる仕事なんだ」
と、思いを語り合い、どんなときでもこれを基準にした仕事をしようと、気持ちがひとつになりました。これが会社の原点となったのです。

すると、自分たちは何を大切にして、頑張っていけばいいのか。
会社として、何に特化して、チカラを入れていけばいいのか。

原点に戻ったことにより、自ずと結論は出ました。
それは、大手との提携を解消し、自分たちの独自の道を歩むこと。
そのために、スタッフはもちろん、今まで一緒に協力してきた関係者に、自分たちの思いを伝え直し、共有しはじめました。

何を大切にし、何のために仕事をし、新郎新婦にどんな結婚式をして欲しいのか。そしてそれが、数十年後の家庭に、どうつながってほしいのか。だから、どのような基準で仕事をしたいのか、アルバムを見せながら、溢れる思いを何度も繰り返して、伝えていきました。
そして、チームはひとつになり、協力して下さる関係者との絆も深まったのでした。

 

■育成の原理原則

そもそも、どうすれば、人は育つのでしょうか?

それは、関わる自分が成長していくこと。それが原理原則です。
成長するには、原点に戻り、働く動機(やる理由、意義、意味)を明確にして、モチベーションを高く働くことです。
そうして、自分が成長していく背中が、周りを感化し、何のために働いているのかが伝わっていくのです。
成長する組織には、教育は必須ですが、自分がモチベーション高く働き、成長していくことが一番の教育なのです。
そのうえで、スタッフが育つ手伝いや環境づくりをすることです。

以前、「奇跡のりんご」で一躍有名になった、世界で初めて無農薬・無施肥のリンゴの栽培に成功した木村秋則さんと、仕事を一緒にさせていただく機会がありました。
木村さんは、年に十数回散布する農薬が原因で、奥様が皮膚に異常をきたしてしまい、無農薬の自然栽培でリンゴを育てることを心に誓います。
しかし、10年挑戦し続けても、リンゴは実りません。周囲の人たちや専門家からも、自然栽培でのリンゴは、絶対無理と言われ続けます。
ある日、子どもの小学校の作文に「うちはリンゴ農家ですが、一度もリンゴを食べたことがありません」と書かれていて、木村さんは心底、落胆します。
子どもたちに鉛筆すら買えなくなり、死のうと思い、岩木山にロープを持って、一人で山に入ります。すると、そこで自生した1本のくるみの樹を発見。その樹木は、枯れることなく、また害虫も発生していませんでした。木村さんは、これはりんごの木でも同じことが考えられるのではないかと思います。答えは、やわらかい、栄養満点の土にありました。これが奇跡の大逆転の糸口となり、とうとう苦心のすえリンゴを実らせることに成功します。

木村さんは、おっしゃっていました。
「それまでの私は、目に見えるりんごの木ばっかりしか見ていませんでした。でも大事なのは、その下の見えない土の方でした。その日から、どうしたら土を活かせるか、どうしたらりんごが喜ぶかを考えました。私は、りんごを育てる農家ではなく、りんごが育つお手伝い業になったのです」と。
これは、人材育成でも不変の原理です。
人を育てるのではなく、人が育つお手伝いをするしか、私たちはできないのです。

 

■成長する組織=1+1>2 衰退する組織=1+1<2

成長する組織=1+1>2 成長する組織は、手を取り合い、長所を活かし合います。
衰退する組織=1+1<2 衰退する組織は、足を引っ張り合い、短所を責めます。

すなわち、成長する組織は、お互いに短所を補いあい、長所を活かし合う相乗効果が生まれる組織です。

誰が、何に詳しいのか?
何が得意で、何が苦手なのか?
どんなときに長所が活かせて、どんなときに短所が目立つのか?
それを全員が知ることです。

そのためには、お互いが、お互いの強みをどうすれば生かせるのか?
NGワードは何で、どんな言葉を意識的に投げかけて、どんなことを避ければいいのか?
どうすれば長所を活かして、活躍できる環境・流れを作れるのか?

それらを具体的に話し合える、共有の場(朝礼、会議、ミーティング、終礼、研修、勉強会…)を設けることです。
私がお手伝いをした組織の中では、一人一人の取扱説明書をみんなで作って、共有しているところもあります。しかも、定期的に取扱説明書を更新しています。

そうやって、全員で協力して、ひとりひとりが、活躍できるお手伝いをし合う。これが、成長をお手伝いするということであり、成長する組織づくりなのです。


上薬研究所「地域で愛される動物病院作りのお手伝いをするコミュニティーレター」
(全国の動物病院3300部発行)
小田真嘉の「信頼と共感の経営」連載コラム 2014年10月号より