成長コラム One Point Column

Doing連載魅力経営のヒント
第5回 成長する組織(チーム)の原則 (繁栄編) (2014年11月号)
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■多くの会社や個人が突き抜けて活躍するきっかけになった成長の原則

ここ2回連続で、お届けしてきた「成長する組織(チーム)の3つの原則」

1.採用の原則(スタッフ募集、面接、雇用)
2.育成の原則(スタッフ教育、チーム作り)
3.繁栄の原則(ファン作り、しくみ作り)

今回は、最後の3つ目、「繁栄の原則」について語ります。業種業態や規模に関わらず、多くの会社や個人がブランド企業(店/人)として突き抜け、活躍するきっかけになった成長の原則です。通常1泊2日の合宿研修でお伝えするエッセンスを、凝縮して一気にお届けします。
きっと初めて知る概念や感覚だと思いますので、ぜひ何度も読んでいただければ幸いです。

 

■「繁栄」と「衰退」の循環サイクルの波とは?

流通業において、繁栄と衰退の循環サイクルを紐解いた「アコーディオン理論」という有名な法則があります。
幅広い商品を品ぞろえする「総合店」と、何かひとつに特化した商品(サービス)を扱う「専門店」が交互に出現して市場をリードし、繁栄と衰退を交互に繰り返すという理論です。

たとえば、衣料業界でいうなら。
最初は、呉服店、個人の洋品店、テーラーなどの個人の小規模専門店ばかり。そこから、百貨店が総合店として主役に踊り出ます。
その後、流行を重視したインポートブームがやってきて、セレクトショップなどのコンセプトに特化した専門チェーン店が人気になります。
次に、しばらく低迷していた総合店のイオン、イトーヨーカドーなどが、GMS(総合スーパー)として、流通革命を起こして急成長して巻き返します。
そこからは、様々なデータを活かして製造販売するマーチャンダイジング(商品政策)をする「ファストファッション」と呼ばれるユニクロ、GAP、ZARA、H&Mなどの低価格&機能化した専門店が人気となりました。

そして今さらに、マツキヨ、トイザらス、ニトリ、ヤマダ電機、ドラッグストア、コンビニエンスストアなど、家電、衣料、玩具などの業種別に、複数のカテゴリーキラーと呼ばれる大型ディスカウント専門店を集めた、複合施設の巨大総合ショッピングセンターが、全国各地でにぎわいを見せています。
しかし、そのウラ側で、異業種の専門店が集まった総合店「パワーセンター」としてパワフルに集客するため、地域住民の生活スタイルそのものが変わり、地域密着の小さなお店や商店街は、大打撃を受けているのが現実です。

このように衣料業界をアコーディオン理論で紐解けば、「専門店」→「百貨店」→「専門店チェーン」→「総合スーパー」→「専門化ファストファッション」→「総合施設ショッピングセンター」と、専門店と総合店が交互に繁栄と衰退を繰り返しています。

しかし、このサイクルは、衣料業界に限ったことではありません。
専門店の代表のコンビニも、今はカテゴリーキラーとして、コンビニエンスストアやドラッグストアなどは、食品の取り扱い、宅急便、クリーニング、役所機能などまで充実して、総合化へ向かっています。

しかも、インターネットが発達し、アマゾンは、宅配サービス「アマゾンフレッシュ(AmazonFresh)」をはじめ、肉、魚、野菜、果物のほかにも、ペットフード、地元のベーカリーやケーキショップの商品、シャンプー・洗剤など日用品、従来扱っていた書籍や家電製品、事務用品、おもちゃなども含めて50万点を最短で、ご自宅まで配達。競争は、さらに多様化、複雑化、激化しています。

 

■ますます加速するアコーディオンの波が襲う中で、いかにブランド化していくか

「総合化」→「専門化」→「総合化」というアコーディオンの波は、急にサービス提供者(プレイヤー)が増えた、歯科医医院、税理士、弁護士、美容室などの世界でも、同じサイクルが起きています。
しかも、サービス提供者が増え、競争が激化すれば、さらに総合化と専門化の繁栄と衰退の循環サイクルは加速していきます。

そんな時代の変化に対応せず、頑なに従来通りの同じことを続けている多くの会社、お店、個人、医院からは、人は離れていきます。
なぜなら、従来のサービス提供、商品販売、治療や施術をしていても、消費者(お客様/飼い主さん)にとってみれば「あそこって、他と何が違うのか分からない」「結局、どこも同じでしょ!?」と言われ、『コモディティ化(均質化/一般化)』していきます。
総合化か、もしくは専門化かなど、何かで尖って、『ブランド化(独自化/個性化)』しなければ、変化の波に巻き込まれ、もくずと消えていってしまうでしょう。

先に、飽和している歯科医医院、税理士、弁護士の業界では、特化した専門家か、何でもできる総合化のどちらかが活躍しています。
傾向としては、人口の多い都心では専門家が主に活躍し、地方や地域密着では総合化しているところに、人が集まっている傾向があります。

すべての業界も職種も、どんなお仕事も、これからの活躍のカギを握るのは、『個性(らしさ)』です。
他とは違う個性(価値)を明確にして尖らせ、信頼されるお店、人、医院になること。ブランド化(独自化/個性化)していくことです。

そもそも「ブランド(brand)」の語源は、その昔、放牧している牛たちに、自分たちの物であることを証明するに、焼印(brand)を押したことにあります。自分と他人を区別したことが、ブランドのはじまりです。
ブランドとは、いかに他のお店や会社、同業者と違うのか? どこが変わっているのか? それが明確で、お客様、患者さん、飼い主さん、スタッフに伝わっているということです。
逆の視点から言えば、多くの動物病院がある中で、飼い主さんが先生の動物病院に通わなければいけない明確な理由。それがブランド化(独自化/個性化)するということです。

以上を踏まえて、ここからが大事なポイントです。
ピーク時からペット数が激減し、それに反して、動物病院が増えていく中で、私たちはどうしていけばいのでしょうか? どんな手を打っていけばいいのでしょうか?

動物病院として、人間と同じような高度医療に対応すべく、技術向上をして特化し、専門医療を深めていくか?
それとも、健康食品や飼育グッズなどの物販、トリミング、ホテルなど設備を増設したり、総合化して事業領域を広く展開していくか?
そのどちらがいいのでしょうか?

 

■専門化と総合化の激しい消耗戦を抜ける

ブランド化(独自化/個性化)するには、そもそも専門化か、総合化か、そのどちらかしか道は無いのでしょうか?
結論から言います。どちらでもない第三の道があります。

いくら専門化しても、総合化しても、結局は激しい消耗戦になります。一時的に良くても、好調を維持し続けるのは、困難なイバラの道です。無傷ではいられません。
専門化も、総合化もしていないのに、繁栄し続けているところもたくさんあります。
専門化でも、総合化でも、どちらでもない、3番目の道(ルート)があります。それが「教育化」です。

現在、デフレを脱却して、景気は上向きになったものの「モノが売れない時代」と言われています。どんなにいい商品やサービスを作っても売れなかったり、売れてもすぐに消えていきます。
そんな中で、ブランド化(独自化/個性化)し、たくさんのファンに囲まれ、繁盛・繁栄しているところは、お客様にしっかり教育しながら、同時に自分たちも成長していく、「共育」の相乗関係を築いています。
第三の道の教育化とは「お客様にモノを売る、売り買いのビジネス関係」から「お客様を支援(教育)し、共に成長していく仲間の関係」へのシフトなのです。

 

■教育化して、お客様から支持され、ブランドになった人たち

以前、受付嬢を専門で派遣をしている会社さんの相談に乗ったときのことです。
数十社の派遣先の企業から、バツグンの高評判を得ている受付嬢のみなさんたちと話す機会がありました。彼女たちは「受付は、会社の秘書」と誇りを持って働いているので話しが盛り上がり、次第にとても興味深い話題になっていきました。

「私たち、会社の入口にいると、(内部事情を知らなくても)伸びていく会社なのか、衰退していく会社なのかが分かるんです。
たとえば、トイレットペーパーがそれまで、二枚重ねの柔らかいものを使っていたのが、ガサガサの一枚したトイレットペーパーに、急に変わるとか。
あとは受付で、アポで来客された方の話し方を聞けば、商談がうまくいくとか、あまりよい関係を築けていないなぁとか、この取引先の企業さんとは、あまり関わらない方がいいなぁとかも分かります。
他にも、伸びる会社と落ちていく会社では、清掃員の掃除の仕方がまったく違うんです。特に階段が…」と言って、実際のモップがけの違いを実演してくださいました。

数多くの企業を、受付という固定された場所で、定点観測してきた受付のエキスパートのみなさんたちだからこそ、分かること、見えてくることがあります。

実はそれを「会社の秘書の受付嬢から見た伸びる会社、落ちる会社の違い」というタイトルでまとめて、現在の派遣先、そして今まで仕事をした企業に配りました。
すると驚く反応がありました。「多少高くても構わないから、また派遣して欲しい」「社内で営業マンに研修をして欲しい」「うちの会社にアドバイスしてほしい」などです。

競争の激しい派遣業界の中で、その受付専門派遣会社は、単に受付嬢を派遣しているのではなく、秘書として会社の入口(顔)を守り、会社が伸びていくお手伝いをする会社になったのでした。

また以前、結婚式場の音響を担当している会社さんの相談に乗ったとき、こんな質問をしました。
「今まで、多くの新郎新婦さんの結婚式に関わってきて、幸せなご夫婦になるだろうなぁと思うカップルと、正直このまま行ったら危険だろうなぁと思うカップルって、いらっしゃいますか? そのカップルたちの違いって、何ですかね?」と、ご質問すると

「あります! 打ち合わせの段階で分かりますよ。離婚される確率の高いカップルは、打ち合わせの段階から、お二人の意見が食い違ったりします。あとは、そもそも、打ち合わせの時間を合わせようとしなかったり。また、旦那(妻)に伝えておきます、と言っていたことがパートナーに全然伝わっていなかったり…。離婚確率の高そうな残念なカップルほど、打ち合わせしにくいんですよね」とおっしゃっていました。

そこで新郎新婦に、打ち合わせの段階で、次のように伝えてもらうことにしました。
「私たちは、今まで、3000組の結婚式をお手伝いしてきているのですが、それだけ多くの新郎新婦さんを見ていると、あくまでもだいたいですが、ある共通点がわかってきました。
実は、打ち合わせの段階から結婚後に、幸せなご夫婦になるカップルと、とても危険なご夫婦になるかどうか分かります。
たとえば、打ち合わせで…(具体事例を3つ紹介)

つまり、幸せな結婚生活は、もう今の段階から始まっているんですね。
私たちは、単に当日の音響のお仕事をするだけでなく、お二人の心が不協和音を起こさず、美しいハーモニーを奏でるような、ステキで幸せなご夫婦になるためのお手伝いをさせていただこうと思っています。
3000組を見てきて、そのために、とても大事なことが3つございます。それはですね…(ポイントを3つ紹介)」と、最初に伝えてもらうようにしました。
すると、打ち合わせも非常にスムーズに進み、オリジナルな結婚式をプロデュースでき、さらに音響にかけてくださる金額もアップしました。
競争の激しいブライダル業界の中で、音楽に使われる金額は下がる一方、そして新郎新婦さん、結婚式場の音響会社に対する扱いも低い。その中で、当日に単に音楽を流すだけではなく、二人の幸せなハーモニーを奏でるお手伝いをする会社になったのでした。

 

■何を教え、どう育てていけばいいのか?

それまでいい商品を売っていていたお店が急につぶれているように、単にいい治療をしていればいい時代では、なくなりました。
どの良い治療をしても、ニコッと「ありがとうございました」と言って、二度と来てくださらない方もいらっしゃいます。
その一般的な理由は
・治療の説明がない。よく分からない。
・治療費が高い。
・待ち時間が長い。
・医院が、暗い、汚い、臭い。
・獣医師、動物看護師、トリマーが嫌い。
・駐車場が使いにくい、来院しにくい。

などでしょうが、ホントの理由は、違います。
動物病院に行っても、自分の人生が充実する未来をイメージできなかったり、動物たちが元気で幸せになっていく予感が持てなかったからです。

もし、飼い主さんが「ここの動物病院は、他と全然違う」「ここに通っていたら、うちのペットも元気でいられそう。急に何かあっても安心そう」「ペットがいてくれてホント良かった。家族として一緒に生活できるって楽しいなぁ、幸せだなぁ」と、人生が充実する未来をイメージできたり、動物たちが元気で幸せになっていく予感が、少しでも持てたとしたら…。しぜんと口コミ紹介がおきて、医院内は飼い主さんと可愛い動物たちで溢れるはずです。
そのためには、飼い主さんと一緒に成長していく、「共育」の相乗関係を築き、いかに動物たちと飼い主さんたちを支援(教育)していくかが、カギを握ってきます。

支援することは、主に次の3つ。
1)動物たちが、元気でいられるサポートをする。
2)飼い主さんが、動物たちと心通わせるためのお手伝いをする。
3)愛する動物たちとの生活が充実するための応援をする。

それら3つを支援(教育)していくには、今までやってきたこと、見てきたこと、深く考えたこと、反省したこと、二度としないと誓ったこと、残念な思い・悔しい思いをしたこと、一緒に泣くほど嬉しかったこと、動物たちと関わる喜び…などを、一度整理することが大事なってきます。
今まで見てきた動物たち、関わってきた飼い主さんを通じて知った(悟った)、本質、真実、法則を整理します。
その抽出方法だけでも、何十時間でも語れるのですが、今回は3つのポイントに絞ります。

1.動物たちが元気でいる飼い主さんたちの共通点は、何か?
2.動物たちが可哀想な飼い主さんたちの共通点は、何か?
3.1と2の飼い主さんたちの違いは、何か?

その共通点と違いを、獣医として、プロフェッショナルとして、飼い主さんに教えてあげることです。
たとえば…
「私は今まで、だいたい5000頭ぐらいのワンちゃんと、それと同時に飼い主さんと関わってきました。その中で、ペットが元気で、楽しい毎日を送っている飼い主さんたちには、いくつかの共通点があったんですね。それは…。
そして逆に、本当にペットが可哀想な、残念な飼い主さんにも、いくつかの共通点があったんですね。それは…」

動物病院として、ペットの病気やケガを治療するだけではなく、ペットと共に過ごす毎日が幸せで、豊かな生活になるお手伝いをすること。動物たちが毎日元気にいられるように、飼い主さんに、その秘訣を教えてあげること。それが教育化です。
それを続けていれば、しぜんとブランド化(独自化/個性化)していき、たくさんの飼い主さんと動物たちに囲まれ、繁栄していくでしょう。これが第三の道です。

 

■富の本質と繁栄の原則

思想家、デザイナー、構造家、建築家、発明家として、多方面で活躍したバックミンスター・フラーは、『富』について、次のように定義しています。

『人間の生命を維持・保護・成長させるためのエネルギーとノウハウ(知恵)が、さらに発展し続けていくことこそが「富」の本質である』

つまり、動物たちを助ける、飼い主さんを救う。飼い主さんを教え育てていく行為こそが富の本質であり、教育していくプロセスを通じて、ノウハウ(知恵)は増えていく。それこそが繁栄の原則です。

また、バックミンスター・フラーは、『宇宙船地球号』という言葉で有名ですが、著「宇宙船地球号操縦マニュアル」の中で、さらに次のように語っています。

「私は、地球で生きている。けれども私が何者か、今も自分でわからない。カテゴリーなんかでないことは、それでもちゃんと知っている。
私は、名詞なんかじゃない。どうやら私は動詞のようだ。進化するプロセスそのものだ」と。

 

すなわち、成長する組織(チーム)とは、人を活かし、人の役に立ち、人を教え育てる組織なのです。


上薬研究所「地域で愛される動物病院作りのお手伝いをするコミュニティーレター」
(全国の動物病院3300部発行)
小田真嘉の「信頼と共感の経営」連載コラム 2014年11月号より