成長コラム One Point Column

経営のヒント~信頼と共感の経営~
第6回(最終回) これからの私たちの役割 (2014年12月号)
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■経済格差が生まれてしまう、不平等の理由とは?

2014年に、フランス人の経済学者トマ・ピケティの著書『21世紀の資本』がアメリカで、50万部を超えて一大ブームになりました。
ピケティは、日本も含め、世界20ヶ国以上の国々、過去200年分の税務統計資料を徹底的に分析して、ある結論に至りました。それが次の式です。

「 r > g 」
r = the rate of return on capital(資本収益率)
g = the growth rate of economy(経済成長率)

この式が示していることをカンタンに言えば、資本家の株や不動産などの資本が生み出していく価値の方が、労働者が働いて生み出す経済的付加価値(賃金)の伸びよりも、常に高いということ。つまり「富を持つ者」と「持たざる者」の格差は、どんどん広がっていくということです。
「アメリカンドリーム」に象徴されるように、誰でも努力すれば豊かになれることを信じているアメリカ人にとって、ピケティの主張が衝撃だったのです。
現実、アメリカでは、全所得の50パーセントを、上位10パーセントの人たちが持っている状況です。3年前にアメリカ全土で起きた反格差デモの合言葉は「99%対1%(私たちは99%だ!)」で、富を独占している資本家たちに対する運動でした。

 

世界的に経済格差はますます広がり、日本もいずれ、そうなるのではないかと予測されています。(※実際、アベノミクスの経済的恩恵を直接受けた企業や個人は、全体の1~2%程度。非正規雇用が123万人増え、正規雇用が22万人減少。年収1000円以上が14万人増え、200万円以下が30万人増えた、という調査データがあります)

 

こうした、ごく一部の勝者と大多数の敗者の格差が生まれる根本原因は、資本主義の構造そのものにあると主張したのが、ピケティなのです。

 

だからと言って、構造のせいにしていても、何もはじまりません。
まずは、資本主義の本質と構造を理解すること。
その上で、自分の意志で手を打ち、切りひらいていくことが大事になってきます。

 

■資本主義の始まりと、2つの前提条件

資本主義の歴史は、そんなに長くはありません。ここ200年~300年ぐらいの話しです。資本主義が栄える前、世界は日本もヨーロッパも「封建制」で、国が動いていました。
封建制とは(乱暴な言い方ですが)、主君が家臣に土地を与え、そこに農民を縛りつけ、年貢を吸い取る(搾取する)システムです。

 

ヨーロッパの封建制は、8世紀頃からはじまり、14世紀ぐらいまで続きます。その後、十字軍遠征などの戦争によって物資が不足し、封建制では国を維持することができなくなりました。そこで、封建制の農業から、重商主義に移行したのでした。 特権階級のごく一部の人たちが、労働者にモノをつくらせて貿易を行い、その利益を吸い取る(搾取する)ビジネスシステムをつくりました。それにより経済は発展し、資本家と労働者の構造が生まれたのです。

 

さらに、18世紀半ばからイギリスで起きた産業革命によって、ヨーロッパだけではなく、世界は自由資本主義へと巻き込まれていきました。
それにより「吸い取る(搾取する)資本家」と「吸い取られる(搾取される)労働者」という形がそのまま、「吸い取る(搾取する)国」と「吸い取られる(搾取される)植民地」へと、世界規模へと広がったのでした。

 

そもそも資本主義には、2つの前提条件があります。

1)「奪う側」「奪われる側」の関係で成り立つ
2)経済成長し続けることで、維持できる

 

しかし昨今、この2つの大前提が崩れてきているのです。
まず、甘い汁を吸ってきた一部の資本家たちによって、巧妙に隠されてきた「奪う」「奪われる」の構造に、人々が気づきはじめたこと。
そして、発展途上国が次々に経済成長し、一方的に搾取される国が減ってきたこと。(現在は、アメリカが一人勝ち、独走状態になっています)

 

世界的に、資本主義が機能するために重要なのが「金利」ですが、長期にわたって低金利(もしくはゼロ金利)となり、資本を投資しても利潤の出ない状況になっています。
さらに日本においては、超低金利にも関わらず、借りる人が少なく、計画もなく貯蓄している人が急増しています。
世界的に、お金の流れが止まり(一部に偏り)、経済発展が行き詰ってきたのです。

 

しかし、経済成長しにくいからと言って、すぐに資本主義が終わるということではありません。「成長を前提としない新たな資本主義」へと、第二局面に突入したということです。
これは、非常に厳しい世界が幕を開けたということでもあります。
なぜなら、「今日よりも良くなる」という期待が持てない中で、自分で自分の意識(気持ち)を高めていき、自分たちの価値基準を信じ、試行錯誤しながら切りひらいていくことが求められるからです。

 

■新たな資本主義を切りひらく生命論

私たち個人が、新しいシステムを提案・構築して、国全体、世界経済を変えることは、非常に難しいかもしれません。しかし、私たちができること、変えられることは、たくさんあります。
新たな資本主義を切りひらいていくには、仕事を単に搾取して儲けるための「ビジネス活動」ではなく、共に繁栄していくための「生命活動」と置き換えてみることです。

 

そのためには、まず「経済(お金)」を「血液」と見立て、世界全体を、ひとりの「人体」と考えてみます。
お金という血液が循環することで、世界という生命が維持されているイメージです。 そう考えると世界は、3つの状況と言えます。

 

1)血量が細部まで行き届いていない。
2)血液が汚れて、ドロドロになっている。
3)循環が悪い(一部に血液の偏り)がある。

 

もし、そんな状態の人がいたら、どうでしょうか?

 

血行が悪く、全身に栄養と酸素が行き渡らない。しかも、体の一部(全体の1%)に血液の90%以上が集まって固まっている状態です。病気も末期で、生命の危機、死の直前であることは、誰にでも分かることでしょう。

 

そんな瀕死の状態で、私たちが豊かに繁栄していくカギは、『小さな生命体をつくる』ことにあります。

 

■小さな生命体をつくる3つの条件

日本の人口が減少していくのは明らかです。
内閣府の調査データでも、2030年には、1億1600万人に減少し、その人口の1/3近くが65歳以上になります。そして、60年後(2048年)には、1億人を割って9913万人になります。
それにともない、経済の担い手である労働人口の「生産年齢人口(15~64歳の人口)」は、2030年には1300万人減り、6700万人ほどになります。
15歳から64歳までの労働人口の減少は、経済規模と労働市場の縮小に直結します。とても大雑把ですが

 

GDP(国内総生産)=労働力人口×労働時間×労働生産性

 

ですから、労働力人口が減るということは、GDPも減っていくのも、また当然のこと。
しかも、それに反して、返さなければいけない、借金は増え続けているのです。
(国の借金は、ここ20年で2倍以上に膨れあがり、2014年10月時点で1038兆円、国民1人当たり817万円になっており、財務省は2015年3月末には、1143兆9000億円に達すると予想しています。この状態で、さらに円安に動けば、ハイパーインフレやデフォルトがいつ起きても、おかしくはありません)

 

つまり、単純に誰が考えても、これから景気は良くなっていかない(一時的には、経済政策で良くなることはありあえる)。そして、市場も広がらない(一部ブーム的に広がる可能性はある)ということです。
ますます厳しい外的環境になっていくのであれば、淡い過剰な期待をしたり、良い環境になるのをじっと待つのではなく、景気が良くならない前提で戦略を組み、対策をするしかありません。

 

大激変動の混乱期の乗り越え方は、歴史から学ぶことです。

 

恐竜が6500万年前に絶滅したのは、隕石衝突説が有力です。隕石衝突によって、空が塵や火山灰に覆われて気温が低下し、身体の大きな恐竜たちがその環境の変化に耐えられなくなったため、絶滅したと言うものです。
そんな中で生き残ったのは、温かいところに身を隠し、わずかな食料で食いつないだ小さな哺乳類たちでした。

 

2500年前の中国で、「論語」で有名な孔子は、弟子たちに、大混乱期の生き方で大事なことは「意なく、必なく、固なく、我なし」と説きました。その意味は 無理やりに意地を通そうとせず、広い視野で物事を判断する。
全てのことを決めた通りしようと無理をせず、他人の意見も取り入れていく。
一つのことに固執して頑なにならず、状況に応じて臨機応変に柔軟に対応する。
自分の立場や都合だけを考えず、相手の立場を思いやって行動する。
孔子本人も、まさにその4つの姿勢を貫いた人物だったと言われます。だからこそ、3500人の弟子たちが育ち、要職を担ったり、活躍したのでしょう。

 

日本には、創業200年を超える企業が3146社あり、世界で一番老舗企業が多いのは有名です。(そのうち7社は1000年以上の歴史を持ち、世界最古の企業トップ3はすべて日本企業)
そんな老舗を直撃した大きな経済危機が2度ありました。それが江戸時代の財政難(享保の改革)のとき、そして明治維新です。
詳細は省きますが、「三方よし」で有名な近江商人。三井財閥の基礎を作った三井高利が有名な伊勢商人。天下の台所を支えた大阪商人。その日本三大商人たちは、顧客の信用を第一に信頼関係を築き、協力し合って逆境の波を越えました。その結果、老舗企業の2割が享保の改革のときに、8割近くが明治維新のときに生まれました。

 

恐竜絶滅で生き残った哺乳類たち、孔子と活躍した弟子たち、繁栄した老舗企業たちなどの歴史から学ぶ、逆境の大激変動の中で生き残るには、次の3つで小さな生命体をつくることです。

 

 1.不要なことを削って、身軽になる。
 2.提供価値を上げて、お役に立つ。
 3.コミュニティーをつくって、助け合う。

 

これからの成長しない資本主義の中で、私たちが打っていく3つの手を紹介していきます。

 

■ 1.不要なことを削って、身軽になる

今は、どの業種業態も共通して、昔のように、いい治療、いい商品(サービス)だけを提供するだけでは、不十分になりました。
医療業界はもちろん、行政の仕事でさえも、一流ホテルや有名飲食店などのサービス業と、比較されてしまう時代です。少しでも対応が悪ければ、すぐにクレームになったり、インターネットに悪評が出回ったり、人が離れていってしまいます。
サービス力を向上させたり、ホームページやSNSの管理をしたり、早急な対応が求められる時代です。
動物病院でも、医療技術の向上はもちろんのこと、サービス力向上、プロモーション、集客&フォロー、組織作り、情報提供、ホームページ運営管理…と、やることは、数年で倍増していると思われます。
さらに、次々に新しい情報が押し寄せてくることも合わせて、やらなければいけないことが、雪崩のごとく襲ってきます。
その波に巻き込まれて、手当たり次第にやっていけば、お金と時間とエネルギーは、あっという間に失われていきます。
そして、一生懸命に努力した割には、ほとんど形や成果に結びついていない。飼い主さんに喜ばれていない…。という悲劇も少なくないでしょう。

 

実は、起きる出来事や襲ってくること、やっておいた方がいいと思うことの9割は、あまり重要でないことがほとんどです。
火消しや皿回しのように、場当たり的に対処していたら、本当にやるべき重要で大事なことに、お金と時間とエネルギーの経営資源を集中させることができなくなってしまいます。
本当にやるべき重要で大事なことに、経営資源を集中するには、母体を小さくすること。身軽にして臨機応変な対応ができるようにしておくことが必須です。維持コストを削減して、うまくやりくりして余裕をつくっていくことです。

 

「何を減らし、何を残すか」を正しく判断するには、自分たちにとって大事なこと(大切にしたいこと)を決めることです。

 

そのためには、次の3つを自分の良心に問いかけ続けることです。

 

1)自分は、何が好きなのか?    → 心から望んでいること(世界)は何か?
2)自分は、何を大切にしたいか? → 何を大切にしている人と関わっていきたいか?
3)自分は、どんな貢献できるか? → 自分のお役目(役割)は何か?

 

この3つを考えたうえで、全国約1万の動物病院がある中で、「自分たちは、(飼い主さんと動物たちに)どんな理由で選んでもらいたいのか?」を決めることです。
ただ単に「近所にあるから、なんとなく」「前から通っているので…」という理由だけで、飼い主さんから選ばれるのは、とても危険です。ある日突然、来院数がゼロになってしまうことも…。

 

飼い主さんと動物たちから、どんなことを期待されたいのか? どんなことで喜んでもらいたいのか? 長く通ってもらうことで、どんなハッピーな日常を送って欲しいのか?
それを問いかけ続ければ、自分たちが大切にしたいこと、力を入れる領域、進みたい方向性が見えてくるはずです。

 

すると同時に、おのずと「やらないことを決める」ことができます。
やらないことが明確になれば、余計な経費を使うことなく、コストカットできます。
周りの動物病院がやっているからというだけで、高額な医療機器を導入しなくてすみます。
むやみやたらに事業拡大したり、焦って新商品(サービス)を投入しなくてすみます。
そうすることで、経営資源を温存し、やるべき1割の大切で重要なことに集中特化できるようになるのです。

 

■2.提供価値を上げて、お役に立つ

少し前の話しになりますが、大企業が新商品をつくる際に、「F1層(20歳から34歳)」と呼ばれる、年収300万~400万の女性をメインターゲットして、商品(サービス)を開発し、提供しているときがありました。
しかし次第に、予測よりもモノが売れなくなっていきました。たとえ売れても、すぐ売れなくなり、商品サイクルが早くなりました。
その原因のひとつが、格差が広がると同時に、消費行動も大きく二極化したからだと言われています。

 

 

ある企業の独自調査では、「300万以下の層」と「600万~800万の層」の2つに、大きく分かれてきている結果が出たとのこと。
300万以下の層は、自分の好みに、だいたい6~7割合っていれば買ってしまう。
600万~800万層は、自分好みのスタイル、機能、品質に、ほぼ合っていないと買わなくなっているそうです。

 

 

しかし、それは年収の問題でありません。
なぜなら、年収によって、消費行動が変わるのではなく、本人の価値基準(人生観)によって消費行動が変わるからです。
たとえ、年収が高かろうとも、生活必需品(必要最低限に消費するモノ)については、できるだけ安く、便利に、早く欲しがる傾向があります。
しかし、年収が多少低くても、自分にとって必要(だと思える)モノ、毎日が楽しくなりそうなモノ、人生をより充実させてくれそうなモノならば、高くても、不便でも、時間がかかっても手に入れようとします。
300万以下であっても、できるだけ生活を切り詰めて、趣味や旅行などにつぎ込む人は、たくさんいらっしゃいます。

 

 

ちょっと前までは、欠乏動機から生まれる「~が欲しい」という欲望による消費でした。だから良いモノ、かっこいいモノ、可愛いモノ、便利なモノが売れました。しかし、モノやサービスが溢れて、ある程度欲望は満たされ、欲望消費は急降下しました。
今は、向上意欲から生まれる「~になりたい」「~を楽しみたい」「~な毎日にしたい」という体験や人生を求める意識による消費へとシフトしました。

 

 

『意欲消費』から『意識消費』へとシフトした背景には、時間感覚の変化もあります。
ここ数年で、テレビの視聴率は低下し、CDもテレビゲームも雑誌も売れなくなりました。それは、スマートフォンの普及などによって、エンターテイメントの選択肢が増えたことにあると言われています。
それは「可処分所得(生活をしていくのに絶対に必要な金額を引いて、自由に使えるお金)」以上に、「可処分時間(生活をしていくのに絶対に必要になることをする時間を差し引いた、自由に使える時間)」を、何に使うのか敏感になってきていることにあります。
スキマ時間でも、スマートフォンがあれば、ちょっと前にはできなかったことができるようになりました。テレビ番組の視聴率を争うライバルは、他局のテレビ番組ではなくインターネットの動画やSNSだったり、メールチェックや仕事だったりします。
それと同様に、どのペットを飼うのかという比較ではなく、動物を飼うか、それとも友達とルームシェアーか、オンラインゲームか、資格取得か、婚活か、カルチャースクールか、もしくはペットロボか…、など全く違うことがライバルになってしまったのです。

 

 

意識消費では、「どんな豊かな時間を過ごしたいのか?」という問いが重要です。
なぜなら、物質的な豊かさを求める時代から、豊かな人生を送ることを求める時代へとなったからです。
豊かな人生とは、人によって(人生観によって)バラバラです。だからこそ今、豊かさの再定義が求められるのです。

 

・何をしているときに、幸せ(楽しさ)を感じるのか?
・そもそも自分は、何に豊かさを感じるのか?
・何があれば、私の人生はより充実していくのか?

 

もし、その答えに合うモノやサービスが見つかったなら、今ハマっている(多くを費やしている)お金も時間もエネルギーも、惜しむことなく移行するはずです。

 

ペットブームが去ってしまった原因と、ペットを新たに飼う人が増えない根底には、ペットを飼うことが、自分たちの豊さにつながらない(知らない/実感できない)人たちが増えたからでしょう。

 

それらを踏まえて、動物病院として、これから何をしていくべきなのでしょうか?

 

動物病院で言うならば、単に治療や定期健診だけをするというスタンスではなく、飼い主さんと動物たちの毎日が充実するよう、豊かな時間を過ごせるような応援をし続けていくということに尽きるでしょう。

 

「毎日が充実し、豊かになるお手伝い」と言っても、みなさん千差万別です。
飼い主さんの生の声(不満、悩み、楽しみ、望み、動物病院への要望…)を直接聞きながら、自分たちには、どんな応援ができるのかを問いかけ、試行錯誤しながら、工夫改善して提供価値を上げて、お役に立っていくしかありません。

 

そのための大事な第一歩が、飼い主さんのことを知る努力です。
知るために必要なのが、3つ目のコミュニティーがカギを握ります。

 

■3.コミュニティーをつくる

小さな生命体をつくるには、3つ目のコミュニティーこそが、もっとも大事になってきます。「1.不要なことを削って、身軽になる」「2.提供価値を上げて、お役に立つ」の2つは、コミュニティーをつくるための土台づくりみたいなものです。

 

命が宿った生命体となるような良いコミュニティーをつくるには、飼い主さんと動物たちも、自分たちの大事な体の一部と考えてみることです。
たとえば、右手の手首をひねって痛めてしまったら、すぐに対処や治療をします。その後も、右手が気になり、様子を見ながら、いたわっていくでしょう。
それと同じような感覚で、意識し、関わり、診て、治療し、助言し、お付き合いしていくことです。

 

地域密着(ローカル)で、飼い主さんと動物たちと、自分たちは、一心同体と考えたうえで、動物病院を「飼い主さんと動物たちが集まってくる場所」にすることを目指します。
そのためには、動物病院を飼い主さんが集まりやすい(行きたい)場所にしていくことです。
仲間の飼い主さんと楽しく語り合え、思う存分ペット自慢ができる。そして、ペットも喜び、一緒に有意義で楽しいひとときを過ごせる。そんな時間と空間をつくっていく。

 

「今日は、特に用事がないけれども、あそこにまた行きたいなぁ」と、可処分時間を喜んで使いたいと思ってもらえたら最高です。(本当は、これがとっても重要なのですが…)

 

繁栄する動物病院とは、飼い主さんが笑顔になり、動物たちの喜ぶ中心の場所になっているはずです。それはまるで、心臓のようなものであり、そこで生まれる笑顔と喜びが、通ってくださっているすべての飼い主さんと動物たちへと、全身を駆け巡る血液となります。
ポイントは、いきなり大きなコミュニティーを作ろうとしないことです。
まずは、10人ぐらいの核(中心)となる「コア・コミュニティー」をつくってみることです。
ペットを心から愛し、毎日楽しく充実し、豊かな時間を過ごしていると感じる飼い主さんたち10名を集め、お茶会などのプチ・イベントを開催してみましょう。初めての方同士がいらっしゃったら、間に入って紹介してあげましょう。
コア・コミュニティーの名称は、みんなで考え、「ペットを愛する会」「○○大好きグループ」「○○動物病院の仲間たち」など決めるのも効果的です。
そんなプチ・イベントを何回か続けていくと、関係性が築かれていき、次第にコア・コミュニティーがひとつの生命体になり、命(意識)が宿るようになります。
取り組む課題(飼い主さんたちが求めていること)、やってみたいイベントなどの意見や要望(ときには不満)が現れるようになっていくでしょう。あとは、それらを地道に取り組んでいくことです。

 

あとは、少しずつ、そのコミュニティーの参加メンバーを増やしていきます。少しずつがポイントです。いきなり増やしてしまうと、体制が整わず、手が回らなくなってしまうからです。
動物病院として、一番のお金と時間とエネルギーの経営資源を集中するところは、そのコミュニティーメンバーです。次第に、情報と笑顔と喜びのエネルギーの血液循環が起こっていきます。
しかし取り組み始めた当初は、東洋医学的アプローチでいえば、好転反応(瞑眩現象)も起きることも多々あります。
動物病院に対して、強烈なクレームや難しい要望が突きつけられたり、飼い主さんががっかりして離れていってしまったり、長年勤めたスタッフがついていけないと辞めたり、見たくない現実を見たり…。
しかし、それは、次のステージへと進む洗礼(通過儀礼)みたいなものです。確実に前進している証拠です。それも循環作用のひとつです。

 

景気が良くなる見込みも、市場が大きくなる可能性も少ない現状で、豊かに繁栄していくには、飼い主さんと動物たちと一心同体として「共に生きる」こと。必要なのは、その覚悟と、勇気と、優しさだと思うのです。

 

■本当に、そんな愛のコミュニティーはできるのか?

共に生きるコア・コミュニティーのことをお伝えしましたが、一番早いのは、実際に命が宿っている愛のコミュニティーに触れてみることです。
幸運なことに、私たちは、愛のコミュニティーを知っています。そして、すでにその一員になっています。
それが、この上薬研究所の「Jファミリー倶楽部」です。まさにその名前のごとく、動物病院の先生たちを大事な家族(ファミリー)だと思っているからです。単なるサプリメントメーカーの領域を超えて、全国の動物病院の先生方、そして多くの飼い主さん、動物たちのために、とても非効率なことをやっている会社は、他には無いでしょう。もし、仮にあったとしても一時的で、上薬研究所のように長年、スタンスを変えずに続けていることは皆無でしょう。大変貴重な唯一のコミュニティーだと思います。
先生も、そんなコミュニティーの一員なのですから、愛が溢れる命が宿るコミュニティーを作れるはずです。少なくても私と上薬研究所のみなさんは、そう信じています。

 

さて、こうして、お届けしてきました連載コラムも、この第6回で最終回となります。お付き合いいただきまして、心から感謝いたします。
内容的に、少し生意気に感じることもあったと思います。それもすべて、先生たちのお役に立ちたい!通って下さっている飼い主さんと動物たちの幸せに少しでもつながったならば…、という思いで書かせていただいたことです。他意はございませんので、どうぞお許し下さい。

 

最後に、ひとつだけお伝えして、終わりにします。
現在、確認されている最古のペットは1万4000年前に発見された犬の化石だそうですね。3万年前という説もあるそうですが、人間は生きていくために、狩猟のパートナーとして犬を飼い始めました。共同で狩りをしながら関係を強め、人との共存関係が形成されました。それから生活のパートナーとして牧羊犬なども生まれ、今では盲導犬、警察犬、麻薬犬など高度な能力を持つ犬もいます。まさに犬は、共に豊かになってきた一心同体です。
それは、もちろん犬だけではありません。すべてのペットは長い歴史の中で、一緒にいるだけで、数えきれないほどの飼い主や周りを癒やし、勇気づけ、元気づけ、楽しませ、幸せを共有し、思い出を作り、命を教え、命を救ってきてくれたのでしょう。 そして今、そんな一心同体のペットたちの命を救い、飼い主さんの人生が豊かになるお手伝いをしている先生たちに、敬意を込めて、筆を起きたいと思います。本当にありがとうございました。
これからも先生たちとスタッフが使命と働きがいを感じ、飼い主さんの笑顔がどんどん増えていき、多くの動物たちの命が救われ、先生の動物病院から世界中に、喜びが広がることを心から祈っています。

 


上薬研究所「地域で愛される動物病院作りのお手伝いをするコミュニティーレター」
(全国の動物病院3300部発行)
小田真嘉の「信頼と共感の経営」連載コラム 2014年12月号より